楢﨑正剛が太鼓判 「勝ち点1を奪った」磐田GKのワンプレー、注目すべきは「目線」
楢崎氏が断言する「失点しないための確率を上げるセオリー」とは
シーンを解析していくと、クロスへのアプローチ、武藤にシュートを打たれる可能性、そして実際のシュートセーブと、判断と準備の重要性が詰まっていた。その上で楢﨑氏は最初のクロス対応について「僕の感覚からすると、少し高いポジションでした」と続けたが、あくまでも個人差の範疇と理解も示す。
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「クロスに対して高い位置を取ってアプローチする際に重要なのは、それができなかった時に自分がゴールに戻るスピードをしっかりと把握しておくことです。何も計算せず、たた高い位置を取るのではリスクが高まってしまいますし、良い準備とは言えません。この場面のように、左右のポジション修正だけでなく前後のポジション修正も重要で、三浦選手はしっかり足を運んで、そのスピードも頭の中に入っていたと思います。武藤選手への対応に遅れていたら、次のシュートに対してはもっと遅れていたはずです」
正しい動作があれば、必ずセービングできるわけではない。時にはノーチャンスのシュートが飛んでくる場合もある。それでもGKとして「失点しないための確率を上げるセオリーがある」と楢﨑氏は断言する。
神戸戦でのセービングが高く評価された三浦は今年でプロ8年目、30歳のプレーヤーだ。明治大学から2015年に柏レイソルへ加入するもなかなか出場機会に恵まれず、シーズンを通して出場したのは磐田がJ2優勝&J1昇格を達成した昨季が初めて。今季も主力として磐田のゴールマウスを守っている。
いわゆる下積み生活が長かったキャリアの中で培ってきた努力は裏切らない。たったひとつしかないポジションゆえに日の目を見る機会は少ないかもしれないが、その難しさを知る楢﨑氏は自身の体験談を交えてこう話す。
「このワンシーンのようなプレーが常にできる選手であれば、長いシーズンでも計算が立つ可能性は高いと思います。ほかの場面でもスムーズにプレーしていましたし、攻守に渡って力を発揮できるタイプのGKという印象があります。ただしチーム状況に左右される部分はどうしてもあるので、良いプレーが報われない時もあるのがGKの難しさ。でも三浦選手の場合は昨シーズンくらいからコンスタントに試合出場を重ねるようになり、トレーニングで積み上げてきたことが試合での成功体験につながり、それが自信になりつつある時期だと思います。
やはり公式戦で得られる経験は何にも変え難いですし、成長スピードを加速させる場合も多い。それから個人差はありますが、30歳を過ぎてから見えてくるものがたくさんあるのがGKというポジションです。数字で区切る必要はまったくないですし、僕は32~36歳の時に一番動けていた感覚があります。プレーヤーとして充実期を迎えるのはもう少し先ではないでしょうか」
磐田は5月終了時点で15位。3勝6分7敗と苦しい戦いが続いているが、だからこそ神戸戦での勝ち点1には大きな価値がある。「彼のパフォーマンスで勝ち点1を奪ったといっても過言ではない」と楢﨑氏が太鼓判を押した三浦のワンプレーは、GKを生業にする者のおおいなる可能性を示唆していた。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)