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田中希実は「敵なし」ではない 異次元の2冠、その裏で抱えた「孤独、葛藤、恐怖」

レース後に2位の廣中璃梨佳(奥)と抱擁を交わし、健闘を称え合った田中
レース後に2位の廣中璃梨佳(奥)と抱擁を交わし、健闘を称え合った田中

国内の最終調整はたった一人、他選手の情報がなく「怖い」

 800メートルは僅差の2位。レース間の1時間はケアに充てた。「(自分と)向き合う時間があると不安になる。私には考える間もないくらいがいい。今日は体の回復と緊張を感じるギリギリ前の時間だったのでよかった」と振り返った。

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 国内敵なしのような強さを見せたと思いきや、「そこまで力の差があるとは思っていません」と本人の実感は違う。5月後半の米国遠征初戦はシーズンベストの4分06秒35で5位。しかし、2戦目は4分7秒43で最下位の15位だった。国内で飛び抜けた力を見せる一方、世界の猛者には差を見せつけられる。モチベーションの維持が難しい立ち位置にいた。

 チームメートの後藤夢が先に帰国した影響で、日本選手権までの練習は別々になった。田中は御嶽合宿で父・健智コーチのもとで最終調整。たった一人で走り、ライバルたちの姿が頭に浮かんだ。他の選手の情報がなく、怖くなった。

「後藤選手と卜部(蘭)選手の気持ちの強さは、ずっと春先から見させてもらっていた。後藤選手も最終調整は別々。同じチームでも互いに孤独な部分があった。その孤独を制した後藤選手の強さも怖いなって。卜部選手はどういう状態なのか全然わからないので、怖いなって思っていた」

 東京五輪を控えた昨年大会も3種目に出場。800メートル3位、1500メートル優勝、5000メートル3位だった。「昨年度は3種目に出ることを恐れていた。経験して今年は抵抗がなかった」と精神面でタフになったことを実感。一方で東京五輪の1500メートル8位入賞の快挙で脚光を浴び、国内のほとんどのレースでぶっちぎる立場になったことで気持ちの作り方に難しさを感じた。

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