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田中希実は「敵なし」ではない 異次元の2冠、その裏で抱えた「孤独、葛藤、恐怖」

5000m優勝後に笑顔で撮影に応じる田中
5000m優勝後に笑顔で撮影に応じる田中

人知れず抱えた不安「1500メートルが一番怖かったです」

 達観した思考を持つがゆえに、多くを考え込む。人知れず迷いや不安もあった。禅問答のように繰り返した中身を明かしてくれた。

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「去年は失うものがなかった分、楽しめた。今年は3種目の抵抗はなかったけど、恐怖がありました。(3連覇のかかった)1500メートルが一番怖かったです。宿舎でも、会場に来るまでも葛藤があった。『挑戦に意味がある』と言いますが、それは口だけ。結果が伴わないと何やってんだってなると思います。やりたいことをやっている自負があるだけに、結果もほしいけど、(新たな)挑戦もしたい。

 人それぞれ置かれている状況が違って、その中で私だけが苦しいと思ってしまう。今回はいろんな人のことを考えながら自分に向き合い、逃げずに考えることはできた。何に勝てたのか明確にはわからないですが、勝手に想像していたものには勝てたと思います。『つべこべ言っていられない』と。

 負荷を掛ければ火事場の馬鹿力を出せる。逆に言えば、何でもない時は力を出すことができない。今回は一瞬、一瞬に向き合うことができた。この集中力でずっとレースに向き合うことは難しいけど、もしかしたら世界の選手はこれくらいの覚悟でずっとやっているのかもしれない。それくらい今回は自分に負荷を掛けられたと思う。去年以上の結果で、去年以上の力を確認できてよかった」

 10日に1500メートルで3連覇し、東京五輪で日本人初の8位入賞を果たした種目で代表に内定した。4日間で5レースを走破。800メートルもワールドランキングで代表権を獲得する可能性が高いが、本番の日程を考慮し、1500メートルと5000メートルで出場する見通しという。

「両方が中途半端にならないことを意識したい。今は両方で決勝に残る手応えを得られた。今後たくさん失敗することもあると思うけど、今回一度でも成功したことを自信にしたいです」

 まだ22歳。新社会人になったばかり。快挙を達成した東京五輪よりも確かに強くなった。真夏の世界陸上は、成長を証明する舞台となる。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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