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日韓W杯から17年後の「奇跡」 日本ラグビーの歴史的勝利で一変したエコパの未来

リーグワンに所属する静岡ブルーレヴズのホームゲームもエコパで行われている【写真:宇都宮徹壱】
リーグワンに所属する静岡ブルーレヴズのホームゲームもエコパで行われている【写真:宇都宮徹壱】

日本中が沸き立った「シズオカの奇跡」

 2002年大会にエコパで開催されたカードは、グループリーグのカメルーンVSドイツとベルギーVSロシア、そして準々決勝のイングランドVSブラジルの3試合である。サッカーファン的には好カードではあったものの、日本代表の試合は行われていないため、宮城のように強烈な印象を残したわけでもない。その後、日本代表や天皇杯の試合が開催されたものの、国民的な注目を集めることはほとんどなかった。

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 そんなエコパが再び注目を集めたのが、日韓W杯から17年後のこと。ただし、サッカーではなくラグビーで、である。2019年に開催されたラグビーW杯で、日本は優勝候補の一角であるアイルランドと9月28日に対戦。過去7回の対戦で一度も勝利していない伝統国に、日本は19-12で逆転勝利を収めている。この快挙に日本中が沸き立ち、海外メディアは「シズオカの奇跡」と報じた。

 自他ともに認める「サッカー王国」静岡だが、2002年W杯のために作られたエコパがサッカーではなくラグビーで、世界の注目を集めたのは実に興味深い。20年前のW杯の記憶を求める旅。今回は少し趣向を変えて、サッカーファンから冷遇されてきたエコパが、ラグビーで蘇るというストーリーを紹介することにしたい。

 取材のためにエコパを訪れたのは、4月22日の金曜日。試合のない平日だったので、愛野駅からエコパに向かう道中、ほとんど人とすれ違うことはなかった。

 待ち合わせ場所に指定されたのは、スタジアムの前にあるトライシーンをモチーフとしたブロンズ像。3年前のアイルランド戦で、福岡堅樹が劇的な逆転トライを決めた瞬間を捉えた像と思われるが、どう見ても本人に似ていない。しかし、これには明確な理由があった。

「これは福岡選手の姿を借りた、日本ラグビーを象徴する像なんです。つまり全員の力があってこそのトライだったと。ですから、あえて福岡選手の顔にしなかったんです」

 教えてくれたのは、静岡県スポーツ・文化観光部の大石哲也、54歳である。名刺の肩書は「スポーツ局スポーツ政策課課長」。自身もラグビー経験者であり、ラグビーW杯と東京2020(静岡では自転車競技が行われた)も経験しての現職である。インタビューが行われたのは、エコパのVIPルーム。まずは、スポーツ局スポーツ政策課の役割について、大石に語ってもらった。

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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