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「ベッカム様」フィーバーから20年 ソフトモヒカン大流行、日韓W杯で社会現象の背景

日韓W杯直前には左足の第二中足骨を骨折も驚異の回復

 こうしてサッカー発祥国の代表主将に収まり、2001年9月1日のW杯予選でドイツにアウェーで5-1の大勝を飾ってイングランドを熱狂のるつぼに叩き込むと、最終戦のギリシャ戦でグループ1位通過を決める同点弾を得意のFKで決めて日韓W杯出場を決定させた。この時点で、英国でのベッカム人気が一気に沸点に達した。

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 元々イングランドのサッカーファンは1990年代のポール・ガスコイン、そして2000年代半ばに現れたウェイン・ルーニーのように、馬力のあるブルドック型を好む。もちろん、彼ら2人は馬力がある上に英国人としては類稀なテクニックの持ち主であった。

 だからベッカムのような、ハンサムでやや線の細い印象もある貴公子型の選手を崇めることは珍しい。しかし、それもやはり英国のブルドッグのような猪突猛進の精神を尊ぶ労働者階級を中心とした、古典的なサッカーファン層を捉えた時の話である。ところがベッカムの場合は、世界的なアイドルだったヴィクトリアとの結婚、そして映画俳優も顔負けのルックスの良さで、サッカーに関心のない一般女性層の関心も集めた。

 そしてマンチェスター・Uトレブルの中核メンバーとして、相手をタコ殴りするように攻め上がる獰猛なイレブンの中で、精密機械のようなクロスを放つ華麗なプレーが一際目を引いた。さらに代表主将というポジションをつかんで愛国心の強い英国人の憧憬と敬意も集めると、欧州内の最大のライバルであるドイツを撃破して国家的な熱狂を生み出し、日韓W杯で世界の檜舞台に立って、その存在を空前のサッカーアイドルの位置まで押し上げたのである。

 日本での人気は日韓W杯イヤーとなった2002年の年明け以降、各国の注目選手が紹介される最中に、盛り上がっていった印象がある。

 ところがそんな大会前の人気が日本でも急上昇するなか、同年の4月10日に行われたデポルティボ・ラ・コルーニャとのCL準々決勝第2戦で左足の第二中足骨を骨折した。間違いなく、『metatarsal』(中足骨)という言葉が一般の認知を得たのもこの時だったと思うが、一時はW杯出場が絶望と言われた。

 しかしベッカムは驚くべき回復力を見せて日本のピッチに立った。治療の一環として治癒力を高めるために酸素テントに入った写真が世界中のメディアに流れたのを覚えている人も多いだろう。

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森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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