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“サッカーに向く性格”はない 海外名将が断言、多様な個性を束ねるのが「監督の役目」

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はサッカー選手と性格について。海外トップレベルで指揮した2人の監督の言葉から、強いチームに求められる多様な個性について説いている。

闘争心あふれるプレーを見せる鹿島アントラーズのFW鈴木優磨【写真:Getty Images】
闘争心あふれるプレーを見せる鹿島アントラーズのFW鈴木優磨【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:名将が語るサッカー選手と性格

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はサッカー選手と性格について。海外トップレベルで指揮した2人の監督の言葉から、強いチームに求められる多様な個性について説いている。

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 サッカー選手になるのに、どんな性格がいいか?

 その手の質問をしばしば聞く。

「そんなものはない」

 単刀直入に言うが、それが答えだ。

 もちろん、サッカーは集団社会が基本にあるだけにコミュニケーションを苦にしない性格はベターだろう。その点、協調性は一つのアドバンテージかもしれない。人と関わることが極端に重荷になるようだと、「向いている」とは言えないだろう。組織や規律の中で自分の能力を発揮できる。それは活躍の場を得られることに結びつくはずだ。

 しかしあくまでもアプローチの問題で、従順さや善良さばかりでは強いチームにはならない。

「能力の高い選手はたいてい複雑な性格の持ち主だよ。そういう選手こそ、チームに必要とされる。善良さは悪いことではないが必須ではない」

 名将の誉れ高いフランク・ライカールトは、インタビューでそう話していたことがあった。彼が作り上げた伝説のバルサは、ロナウジーニョを筆頭にサミュエル・エトー、シャビ・エルナンデス、カルレス・プジョル、ビクトール・バルデスなど個性豊かな選手が融合し、若き日のリオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタが台頭した。

「監督は善良な選手を探し、チームを作るべきではない。いろんな性格の持ち主を、融合させることが大事。1人はリーダーシップを発揮し、1人は寡黙で従順で、1人は反発心があり、1人は芸術を極める。個性の集まりにダイナミズムを与え、一つに束ねるのが監督の役目。だから、指導者は選手個人の振る舞いに気を配る。練習中、みんなむすっとは良くないが、全員が笑っているのも良くない兆候だ」

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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