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阿部一二三と丸山城志郎、五輪後も続く“ライバル物語” 最強の柔道家が並び立つ意味

自らの限界に挑戦し続け、日々鍛錬を積むスポーツの世界において、アスリートや指導者が発する言葉には多くの人の心に響く力がある。2002年ソルトレークシティ大会から夏季・冬季五輪の現地取材を続けるなど、多くのトップ選手の姿を間近で見てきたスポーツライターの松原孝臣氏が、そんなアスリートたちの発した言葉から試合の背景や競技に懸ける想いを紐解く。

東京五輪、柔道・男子66キロ級で金メダルを獲得した阿部一二三【写真:Getty Images】
東京五輪、柔道・男子66キロ級で金メダルを獲得した阿部一二三【写真:Getty Images】

連載「スポーツの言葉学」、東京五輪後初の大会で丸山城志郎と再戦

 自らの限界に挑戦し続け、日々鍛錬を積むスポーツの世界において、アスリートや指導者が発する言葉には多くの人の心に響く力がある。2002年ソルトレークシティ大会から夏季・冬季五輪の現地取材を続けるなど、多くのトップ選手の姿を間近で見てきたスポーツライターの松原孝臣氏が、そんなアスリートたちの発した言葉から試合の背景や競技に懸ける想いを紐解く。

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 今回は柔道・男子66キロ級の東京五輪金メダリスト、阿部一二三(パーク24)が4月に行われた全日本選抜体重別選手権で優勝を果たした時の言葉から。五輪後初の舞台となった今大会、決勝では代表の座を激しく争った丸山城志郎(ミキハウス)と再び相まみえ、競り勝った。「自分が五輪チャンピオンだと証明するために闘いました」という言葉に、王者のプライド、そして自らを高め続けるライバルの存在の大きさを感じさせた。

 ◇ ◇ ◇

 4月2、3日に行なわれた柔道の全日本選抜体重別選手権。その2日目、男子66キロ級を制したのは阿部一二三だった。

 昨年の東京五輪では「本命」と言われるなか、プレッシャーをものともせずに力を発揮してみせ、金メダルを獲得。あれから約8か月が経った今大会でもその強さは変わることはなかった。

 1回戦で新井雄士と対戦。一本背負いで一本勝ちを収めると、準決勝の内村光暉との試合でも力の違いを見せ、指導3つによる反則勝ちを収めた。

 迎えた決勝の相手は、丸山城志郎。東京五輪代表争いを繰り広げ、2020年12月に代表を決めるワンマッチの試合を実施。約24分の死闘の末にようやく阿部が勝利し、代表の座を手にしている。

 その強敵とのワンマッチ以来の再戦は、やはり緊張感あふれる勝負となった。そのなかにあって阿部は、丸山が得意とする内股をかけてきても落ち着いて対応し、逆に連続技を見せるなど攻撃的な姿勢を見せる。

 4分で決着はつかず、試合は延長へ。決着がついたのは6分38秒。丸山に3つ目の指導で、阿部が反則勝ちを収めたのである。ワンマッチとの試合内容の違いは、阿部の充実ぶりをあらためて示していた。

 その姿は、他の階級の試合からしても、輝きを放っていた。東京五輪代表選手のなかにはコンディションの問題などで欠場する選手がいた。出場した選手たちも、本来の力を出せないケースがあり、結果、男子の東京五輪代表組で優勝したのは、阿部を除けば81キロ級の永瀬貴規のみにとどまった。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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