「パリ五輪」&「世界8強」へ挑戦 ラグビー女子日本代表、強化責任者が語る勝負の1年
7人制と15人制を兼任するハイブリッド型選手の台頭に期待
オーストラリアで本格的な実戦モードに入る15人制にスポットを当ててきたが、今年のターゲットとなるRWCは、7人制が1か月先に幕を開けることになる。7人制代表“サクラセブンズ”も、15人制代表を追うように4月21日にはワールドラグビーセブンズシリーズ第5戦(4月30日、5月1日)出場のためにカナダへと飛び立った。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
ホストチームとして期待された昨年の東京五輪では、全敗で参加12チーム中最下位に終わったサクラセブンズ。昨年12月に正式に代表HCとなった元7人制男子代表の鈴木貴士氏の下で、チーム再建に走り出している。パンデミックの影響で、昨年の東京五輪と2年続きになったビッグマッチで、チームの強化を証明してほしいところだが、浅見副会長ら協会首脳のなかでは新たな選手強化策も模索している。
「2016年のリオ、昨年の東京と、オリンピックへ向けて太陽生命シリーズのような国内の環境、そして代表の強化環境などの整備はできてきています。そのなかで、今は7人制、15人制と強化がきれいに分かれているのが、もったいないなという思いもあります。広いところで選手をシェアできるんじゃないか。選手層をお互いに厚くしていくことは、もっとやっていきたい」
その具体例として同副会長は鈴木彩夏(横浜TKM)の名前を挙げている。2017年の15人制RWCでFL(フランカー)として活躍し、翌18年の7人制ワールドカップにも選ばれている、国際舞台で能力を見せるハイブリッド型の選手だ。
「鈴木さんもそうですが、いずれかの大会で活躍できる選手は、ある程度どちらでもプレーできる人が多い。なので、そういう“行き来”はもっと積極的にやれるのではないかと思います。それに成功しているのがニュージーランドだったり、オーストラリアです。日本がどこまでフィットできるかはありますが、そこは羨ましいですね。そういうハイブリッドの選手が出てきてくれるのが理想ですね。
そのために協会側としては、強化や試合のカレンダーの整備をしていく必要がある。3月から7月までは7人制のシーズンで、8、9月から15人制シーズンだと、体重を変えて臨む選手もいます。それくらいしていかないとダメだと取り組んでくれるチームもあります。だから、私たちとしてはハイブリッドを目指したい選手のために、海外の選手のデータなどもしっかり揃えて、日本にも合うような選手が出てくればいいかなと考えています」
クラブレベルでは、太陽生命シリーズのような7人制に挑戦しながら15人制でもプレーするハイブリッド型の選手は決して少なくない。それを代表レベルでも増やしていきたいという考え方は、選手という資源が、まだまだ潤沢とは言えない日本では必然でもある。
先に挙げたように、7人制RWCでも決勝トーナメント進出を目指すサクラセブンズだが、浅見副会長は「その後」も見据えている。
「RWCの後にアジア競技大会があるんです。その後には、ワールドラグビーセブンズシリーズに出場するための、チャレンジャーシリーズという大会も待っています。そこで昇格しないと、上の大会で経験値を上げていくことができませんからね。2020年からコロナの影響で大会がなかったり、参加できなかった状況から、これからどんどん重要な試合が続いている。本当にチャレンジのシーズンだなと思いますし、来年のパリ五輪前年にはアジア予選もやってくるので、どれも力を抜けない。それこそ、選手層を厚くしないといけないという問題も出てくるはずです」