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31歳柔道家がまだ引退しない理由 五輪代表落選で生まれた「本物の覚悟」とは何なのか

常に「最後」と思って上がる畳、羽賀は何を表現したいのか【写真:荒川祐史】
常に「最後」と思って上がる畳、羽賀は何を表現したいのか【写真:荒川祐史】

全日本選手権へ、何を表現したいのか「見ている人に感じてもらえたら」

 連覇のかかった昨年12月の全日本選手権は、3日前に突発的な腰痛を発症。歩くことすらままならない。「自分に自信が持てなかった」と出場を迷う中、同じ旭化成所属の仲間に相談した。五輪73キロ級を連覇した同学年の大野将平、2学年下で東京五輪81キロ級金メダルの永瀬貴規との3人のグループLINE。「全日本どうしようかな」。信頼を寄せる2人からこう返ってきた。

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大野「そもそも全日本選手権なんて誰が出ても、誰が勝つかわからない大会。だから、畳の上では覚悟や意地が必ず出てくると思うし、どんな姿になっても潔いと思うよ。当日は自分自身の意地に懸けてみたら」

永瀬「僕たちのいう五輪くらいの気持ちを、龍先輩が全日本選手権に懸けていたのならば、どんな形であっても出てほしいです。いい選択をしてください」

 改めて「覚悟」とは何かを考えた。

「永瀬が言った『オリンピックへの覚悟』は自分の中では何なのか。大野が言う畳に上がった時に覚悟、意地って確かに出てくるかもしれない。その時に自分の中でスイッチが入りました。これはもうやるしかないな、と」

 歯を食いしばりながら数試合を終え、腰の状態は最悪。「でも、畳に上がってみると、2人の言葉によって覚悟が出てきた。『いや、負けたくないな』って。最後まで戦い切れた」。結果は準優勝。5試合、心が折れることはなかった。

 今日、迎えるのは王座奪還のかかる舞台。最近の取材では24年パリ五輪を目指すとは言わない。「全日本選手権しか見ていない」。勝つことが大前提。その中で常に「最後」と思って畳に上がる。一体、何を表現したいのか。

「もう上手さとかどうでもいい。『まだこいつはやれるな』『意地があるな』とか、そういうところを見ている人に感じてもらえたら。若手には当然負けていられない。まだまだ負けたくない。僕も先輩たちにやられて悔しい思いをした。組んでいて『経験が凄いな』『上手いな』と感じたこともあった。ちょっと嫌な年上の人として、いてやりたいな」

 組み合わせを見れば年下ばかりだ。アスリートがよく口にするがゆえ、時に安易にも聞こえてしまう「覚悟」というフレーズ。紆余曲折を経たベテランに宿るのは本物だ。

(第2回「競技人口が減っていく日本柔道界の課題」は30日掲載)

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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