池江璃花子、涙の落選から一変 「自分を否定しすぎない」境地に1日で達した背景
「戦わずして負けるか、戦って終わるか」で臨んだ最終日
一変したのは最終種目の後だ。代表入りを逃したレースの後も、涙はなかった。
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言葉も変わった。
「まずは優勝できて、良かったと思います」
一度は最終日、出場しないという考えもよぎったという。それくらい追い込まれていた。
考えに考えた。ここまでの歩みも振り返った。その中で「成長していないわけがない」と思った。練習では昨年よりタイムが向上していたこと、復帰する前と遜色ないほど泳げていることに思い当たった。
「成長していないはずがない、あんまり自分を否定しすぎないようにしないと、と感じました」
「何も成長していないです」と受け止めた100メートル自由形から、自分自身へのネガティブな感情は薄れていった。
すると最終日への気持ちも固まっていった。
「戦わずして負けるか、戦って終わるか、どちらかを選ぶのなら、自分のためにも泳いで未来につなげられたらな、と」
そんな心持ちで出場し、代表入りを逃しても優勝を飾ったレースを前向きに受け止めることができた。
白血病と診断され、長期休養を余儀なくされたのは2019年2月のこと。同年12月に退院した時、2024年パリ五輪を目指していくことを表明した。そこから練習を再開し、少しずつ泳ぎを取り戻していった。そして東京五輪に出場するまでになった。
年が明けて、池江には「ここから」と期する思い、そして自身への期待も大きかっただろう。それがプレッシャーともなり、また「こんなはずじゃ」という思いも生み、自身への疑いも生じただろう。