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池江璃花子、涙の落選から一変 「自分を否定しすぎない」境地に1日で達した背景

自らの限界に挑戦し続け、日々鍛錬を積むスポーツの世界において、アスリートや指導者が発する言葉には多くの人の心に響く力がある。2002年ソルトレークシティ大会から夏季・冬季五輪の現地取材を続けるなど、多くのトップ選手の姿を間近で見てきたスポーツライターの松原孝臣氏が、そんなアスリートたちの発した言葉から試合の背景や競技に懸ける想いを紐解く。

今回は池江璃花子が国際大会日本代表選考会で語った言葉に注目【写真:Getty Images】
今回は池江璃花子が国際大会日本代表選考会で語った言葉に注目【写真:Getty Images】

連載「スポーツの言葉学」、世界選手権の出場権を逃した大会で見せた感情の起伏

 自らの限界に挑戦し続け、日々鍛錬を積むスポーツの世界において、アスリートや指導者が発する言葉には多くの人の心に響く力がある。2002年ソルトレークシティ大会から夏季・冬季五輪の現地取材を続けるなど、多くのトップ選手の姿を間近で見てきたスポーツライターの松原孝臣氏が、そんなアスリートたちの発した言葉から試合の背景や競技に懸ける想いを紐解く。

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 今回は競泳女子の池江璃花子(ルネサンス)が、3月2日から5日に東京辰巳国際水泳場で行われた国際大会日本代表選考会で語った言葉に注目。この大会では50メートルバタフライで2位、100メートル自由形と100メートルバタフライで優勝したものの、派遣標準記録をクリアできず世界選手権(6月/ブダペスト)の出場権を逃した。その悔しさから大会3日目の100メートル自由形のレース後に涙を流すも、最終種目後には前向きな言葉を残した池江。トップアスリートが短期間で見せた感情の起伏の背景に迫った。

 ◇ ◇ ◇

 3月2日から5日にかけて、世界選手権などの日本代表を決める競泳の代表選考会が行われた。例年なら4月の日本選手権が選考の場になるが、新型コロナウイルスの影響で当初、5月に福岡で世界選手権が予定されていた(ハンガリー・ブダペストで6月開催へ変更)ことから設定された大会だ。

 注目を集めていた1人が池江璃花子。昨夏の東京五輪にリレーメンバーとして出場、世界選手権へ向けて個人種目での代表入りを目指していたが、叶わなかった。

 今回の代表選考会では、5種目にエントリーしていた。大会初日の2日、50メートルバタフライで2位にとどまり、翌日の200メートル自由形を棄権。4日の100メートル自由形では優勝したものの、代表選手の条件である派遣標準記録を下回った。

 最終日は50メートル自由形を棄権し、100メートルバタフライに懸けた。優勝は果たしたが派遣標準記録に到達せず。またリレー種目も4者の合計タイムが派遣標準記録に及ばなかったことから、池江の世界選手権出場は断たれた。

 最初の種目で優勝できなかった後、「気持ちが空回りしました」という表現で見せたショックの色が、一気に濃さを増したのは大会3日目の100メートル自由形の後だった。

「何も成長していないです。この1年、頑張ってきたのになんでだろうっていう、気持ちでいっぱいです」

「今の自分にはネガティブな言葉しか出てこないです」

 涙が止まらなかった。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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