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池江璃花子、涙の落選から一変 「自分を否定しすぎない」境地に1日で達した背景

「戦わずして負けるか、戦って終わるか」で臨んだ最終日

 一変したのは最終種目の後だ。代表入りを逃したレースの後も、涙はなかった。

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 言葉も変わった。

「まずは優勝できて、良かったと思います」

 一度は最終日、出場しないという考えもよぎったという。それくらい追い込まれていた。

 考えに考えた。ここまでの歩みも振り返った。その中で「成長していないわけがない」と思った。練習では昨年よりタイムが向上していたこと、復帰する前と遜色ないほど泳げていることに思い当たった。

「成長していないはずがない、あんまり自分を否定しすぎないようにしないと、と感じました」

「何も成長していないです」と受け止めた100メートル自由形から、自分自身へのネガティブな感情は薄れていった。

 すると最終日への気持ちも固まっていった。

「戦わずして負けるか、戦って終わるか、どちらかを選ぶのなら、自分のためにも泳いで未来につなげられたらな、と」

 そんな心持ちで出場し、代表入りを逃しても優勝を飾ったレースを前向きに受け止めることができた。

 白血病と診断され、長期休養を余儀なくされたのは2019年2月のこと。同年12月に退院した時、2024年パリ五輪を目指していくことを表明した。そこから練習を再開し、少しずつ泳ぎを取り戻していった。そして東京五輪に出場するまでになった。

 年が明けて、池江には「ここから」と期する思い、そして自身への期待も大きかっただろう。それがプレッシャーともなり、また「こんなはずじゃ」という思いも生み、自身への疑いも生じただろう。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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