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「あのFKが入っていれば…」 三都主の記憶に刻まれる、日韓W杯トルコ戦の残像

「もしあのFKが入っていれば、結果も変わって、次の試合も出られたかも…」

 ようやくチャンスが巡ってきたのが、決勝トーナメント1回戦のトルコ戦。フレッシュな力が要ると考えたトルシエは、三都主をスタメンで送り出した。

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「最初の10分間くらいは、ゲームに入っていけなかった。でもそれからは自分でも仕掛けて、良いリズムが出てきたんです」

 早くも前半12分にトルコが先制。だが日本も同42分、中央左寄り、絶好の位置でFKを得た。

「あの位置から蹴ることはあまりなかった。でもなぜか自信が溢れ出てきて、どうしても蹴りたいと思ったんです。伸二(小野)もヒデ(中田英寿)もいたけど、ちょっと蹴らせて、と頼みました」

 コースは、ほぼ完璧だった。ところがボールはクロスバーを叩き、枠の外側へとはねた。

「いろいろ考えましたよ。もしあのFKが入っていれば、結果も変わって、次の試合も出られたかもしれない……」

 なぜかトルシエ監督は、三都主を前半で交代。日本はそのまま0-1で敗れた。

 しかし、その後三都主はジーコ監督に左サイドバックとして重用され、最終的には当時歴代4位の日本代表82キャップを記録するのだった。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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