アジアV3逃した熊谷紗希が繰り返した「危機感」 世界の頂に立った主将が知る日本の課題
大会3連覇を目指したサッカー女子アジアカップでベスト4に終わった女子日本代表「なでしこジャパン」。来年に迫る女子ワールドカップ(W杯)出場権の獲得という目標はクリアしたものの、アジアを制することはできなかった。昨年夏の東京五輪後に指揮官が代わり、新チームで臨んだ初めての公式戦。コロナ禍の影響を受け、決して万全な状況ではなかったものの、この結果をどう受け止めているのか。キャプテンとしてチームを牽引した熊谷紗希は大会終了から10日ほど経った今、「危機感しかない」と語気を強めた。
大会3連覇へのプレッシャーは「なかった」が感じていた「責任」
大会3連覇を目指したサッカー女子アジアカップでベスト4に終わった女子日本代表「なでしこジャパン」。来年に迫る女子ワールドカップ(W杯)出場権の獲得という目標はクリアしたものの、アジアを制することはできなかった。昨年夏の東京五輪後に指揮官が代わり、新チームで臨んだ初めての公式戦。コロナ禍の影響を受け、決して万全な状況ではなかったものの、この結果をどう受け止めているのか。キャプテンとしてチームを牽引した熊谷紗希は大会終了から10日ほど経った今、「危機感しかない」と語気を強めた。
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「準決勝で中国に敗れましたけど、結果には全く満足していません。正直、今回のアジアカップ全体のレベルを世界と比べると、まだまだ差があるし、やっぱり今大会は優勝しないといけなかったというのが一番にあります。悔しさの残る大会になりました」
なでしこジャパンが世界を驚かせたW杯優勝からすでに11年。あのとき、まだ若手選手だった熊谷紗希は大会終了後に海外に渡り、世界を相手に戦ってきた。そしてなでしこジャパンでも、もはや替えの利かない絶対的な選手として存在する。前回大会で、連覇を果たした優勝メンバーの一人だが、3連覇へのプレッシャーは「個人的にはなかった」と語る。
「ただ、日本は絶対にアジアを引っ張っていかなきゃいけない、リードしていかなきゃいけない国だという、日本代表としての自覚がありました。それに今大会の全体的なレベルを見ても、絶対に優勝できない大会ではなかった。だからプレッシャーよりも、むしろ取るべき責任みたいなものをすごく感じていました」
昨年夏の東京五輪からは8選手が入れ替わった。コロナ禍で合宿が中止になるなど、準備不足感は否めない。「難しい状況ではありましたけど、『大会のなかでやっていくしかない』と分かった状態で大会に入りました。だからもうやるしかないという感じだった」と大会前の不安を否定した。
初戦のミャンマー戦、第2戦のベトナム戦は5-0、3-0と数字だけ見れば完勝だが、相手は日本から見れば格下。ボール保持率でも上回り、ゲームをコントロールしていたのも日本だった。それでも何か物足りなさが残る。熊谷も「後ろから見ていても、物足りなさを感じた」と口にした。
「このチームになって初めての公式戦ということや、大会の入りということもあってミャンマー戦は難しさもありました。特に2戦目のベトナム戦は3点ともセットプレーからの得点でした。セットプレーで得点が取れることはいいことですが、もっと流れのなかから取れたんじゃないというところの物足りなさは後ろから見ていても感じました。それにもっともっとサイドを崩して、言葉で言うのは簡単なんですけど、相手にとってどれだけの怖さを出せるかというところでは、まだまだ物足りなかったのかなとすごく感じました」
ただ、攻撃のバリエーションは大会が進むにつれて解消されていった。「3戦目の韓国戦より準々決勝のタイ戦、タイ戦よりも準決勝の中国戦のほうがサイドからの攻撃やバリエーションは少しずつ増やせていた」と指摘。その要因として熊谷は、選手同士の特徴の把握を挙げた。
「試合を重ねることに連携面が向上したのはもちろんですが、ピッチに立つ選手の特徴をみんなが理解して、それを生かせるようになったことが大きいのかなと思います。サイドで仕掛けられる選手だったら、そんなに近くにサポートに行かなくてもいいし、そういうところをチームとして少しずつ形にしていくことができた。もちろんまだまだですが、それが少しずつ良くなっていったのかなと」