10代で第一線を退くフィギュアの年齢規定問題 29歳まで現役生活を貫いた鈴木明子の警鐘
今季印象的だった25歳エリザベータ・トゥクタミシェワ
もし、仮に選手の競技寿命が延びたとしても、考えなければいけないことがあります。選手の競技環境はその一つです。全日本選手権に出るような選手も、多くは大学卒業とともに引退。もし、体力的にも精神的にも続けられると思っても、経済的理由で諦めるケースもあります。
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私は大学卒業後、練習拠点としていたスポーツクラブ「邦和スポーツランド」を所属先とし、契約社員として仕事をしながら競技を続けられる環境を用意していただいたことが大きかった。トップ選手はスポンサーがつくこともありますが、それ以外は親が負担するか、アルバイトをしながら競技を続けるか。そこから比べると、競技を続けられる環境は増えていると引退から8年間で実感していますが、これも大切な問題です。
最後に。この問題を考える上で今シーズン、私にとって印象的だった選手が、ロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手です。
25歳になるシーズン、彼女のことをすごく応援していました。彼女が15歳でシニアデビューした2011年のグランプリ(GP)シリーズで、リーザ(トゥクタミシェワの愛称)が1位、私が2位。「すごい若い選手が出てきたな」と思ってから10年間、世界チャンピオンにもなり、でも五輪にはなかなか縁がなく、ただでさえロシアからは若い選手がどんどん出てくる。その中で、競技をやり続けていくことはつらいこともあったはずです。
でも、自分のスケートを貫いてきました。長く見てきたファンにとってはリーザの活躍はすごくうれしかったはずだし、周りの選手たちにとっても希望になる存在。今回はロシア代表補欠となりましたが、それでもここまで続けてくれたことを私自身もとてもうれしく思っています。
彼女のように息の長いスケーターが増えることは、フィギュアスケートの発展という点でも、意味があることではないでしょうか。
(※1)1994年リレハンメル五輪でオクサナ・バイウルが16歳で金メダルを獲得以降は、98年長野五輪のタラ・リピンスキー(15歳)、02年ソルトレイクシティ五輪のサラ・ヒューズ(16歳)、10年バンクーバー五輪のキム・ヨナ(19歳)、14年ソチ五輪のアデリナ・ソトニコワ(17歳)、18年平昌五輪のアリーナ・ザギトワ(15歳)と10代選手が優勝。06年トリノ五輪で金メダルを獲得した荒川静香は24歳だった。
(※2)19歳で引退したソチ五輪団体金メダリストのユリア・リプニツカヤ(ロシア)、元全米女王のグレイシー・ゴールド(米国)ら、海外スケーターが摂食障害を告白。18年平昌五輪で銀メダルを獲得したエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)も自身のSNSで「身長158センチで、体重は33キロ~59キロの間」で変動し、健康障害に悩まされた過去があることを明かしている。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)