平野歩夢、東京五輪から半年で勝てた理由 スケボー監督が見た「雪と陸」を分けない思考
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載する。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#52 スケートボード監督が見た二刀流挑戦
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北京五輪スノーボード・ハーフパイプ男子で、ソチ、平昌と五輪2大会連続銀メダルの平野歩夢(TOKIOインカラミ)が、悲願の金メダルを獲得した。決勝3本目で96.00点を叩き出し、スコット・ジェームズ(オーストラリア)を逆転。昨夏の東京五輪ではスケートボード競技のパークに挑戦。そこからわずか半年で、なぜ平野は世界の頂点に立つことができたのか。似て非なる2つの競技に挑んだ平野の強さを、東京五輪スケートボードで日本代表監督を務めた西川隆さんに聞いて検証する。(取材・文=水沼 一夫)
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平野がついに念願の金メダルを手繰り寄せた。4年前の平昌五輪ではショーン・ホワイト(米国)の前にあと一歩及ばず、もう平野の目には金しか見えなかった。9日の予選を1位で通過すると、決勝では持てる最高峰のルーティンを披露。超大技のトリプルコーク1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)は3本すべてで成功させ、2本目は91.75点と2位に浮上。圧巻は3本目で、技の高さやつなぎ、難度も異次元の滑り。金メダルが決まると、ホワイトもハグを求めて健闘を称えた。
平野は「ようやく小さい頃からの夢が叶った」と、ホッとした表情を見せた。
ここまでの4年の道のりは、平野でしか切り拓けない前人未踏のチャレンジだった。
新型コロナウイルスが発生し、東京五輪は史上初となる1年延期に。平野が描いていた青写真は崩れ、状況は一変した。東京五輪に向けてスケートボードを強化しながら、半年後に迎える北京五輪に向けてスノーボードの準備もする必要があった。
昨年4月には東京五輪を控えるなかで、北京五輪の代表争いに加わるためスノーボードの日本選手権に出場し、2位に食い込んだ。スケートボードの日本代表監督としてこの戦いを見ていた西川さんは、「賭けみたいな状況。ここで1番か2番にならないと無理みたいな感じで追い込まれちゃったので、そういう意味で計画がずれたというのはある」と振り返る。