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フィギュア選手の足元を支える職人の極意 火花の向こうにある「0.01mm」の世界と情熱

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。

ブレード研磨職人の櫻井公貴(きみたか)さん、選手を支える職人の想いに迫る【写真:中戸川知世】
ブレード研磨職人の櫻井公貴(きみたか)さん、選手を支える職人の想いに迫る【写真:中戸川知世】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#45 連載「銀盤のささえびと」第4回・ブレード研磨職人前編

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。

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 連載「銀盤のささえびと」では、選手や大会をサポートする職人・関係者を取り上げ、彼らから見たフィギュアスケートの世界にスポットライトを当てる。第4回はブレード研磨職人だ。スケーターに欠かせないシューズ。底に取り付けられた「ブレード」と呼ばれる刃の部分を研ぐ職人である。わずか0.01ミリ単位で自身の感覚を頼りに削っていく。この道10年になる38歳の櫻井公貴(きみたか)さんに職人の技と想いを聞いた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 職人人生は、よもやの滑り出しだった。櫻井さんがアシスタントを務めて1年後。師匠の坂田清治さんが病に倒れ、仕事を続けられない状態に。知識も、技術も、覚悟も追いつかぬまま、29歳で急きょメインを張ることになった。

「最初は仕方なしにやることになりました。(師匠は)言葉は少なく、見て覚えろという人。病気の後遺症が残り、アドバイスも聞けなくなってしまいました。教わったことは全部と言えば全部ですし、特にこれといったものがないんですよね」

 もともと全日本選手権の出場経験もある元フィギュアスケーター。大学3年から競技の傍らでアルバイトとして坂田さんを手伝っていた。実家は工場で使われる生産ラインの部品を作る製造業。大学卒業後は家業を継いだが、坂田さんに人手が足りなくなり、打診を受けて再びアシスタントに回った。しかし、あくまでもサポート。研磨のことを深く知らず、師匠の急病から苦労が絶えなかった。

 先代への信頼のおかけで、依頼は舞い込んでくる。やるしかない。ただ、自分が研いでも正解がわからない。恥を忍んでライバル店に足を運び、頭を下げて回った。

「もう周りの人全員に聞きましたね。照らし合わせがしたかった。自分で工夫したものを全て確認してもらったり、他の人がどうしているのか聞いたり。もっとやりやすい方法があるんだなと模索していきました」

 師匠は50年以上もこの仕事を続け、浅田真央などトップ選手も支えていた第一人者。櫻井さんは「バツンと途切れてしまった」と従来のやり方を引き継ぐことができなかったが、「自分で構築していくしかない」と暗中模索の日々を耐え抜いた。思いもよらない独り立ちから約2年。徐々に自信が芽生えていった。

「お客さんから頼られることが多くなっていきました。今思うと、最初の方の知識は雑なものが多かった。『あそこでああしておけば』と思うこともあったので、自分の作業に対して離れていったお客さんもいたかもしれない」

「櫻井さんにお願いしたい」。そんな声がやりがいを生み、責任感が増していった。

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