“音”の感覚にも優れる羽生結弦 フィギュア音響のプロが「稀有な存在」と感じる魅力
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#25 連載「銀盤のささえびと」第2回・音響技術者後編
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
連載「銀盤のささえびと」では、選手や大会をサポートする職人・関係者を取り上げ、彼らから見たフィギュアスケートの世界にスポットライトを当てる。第2回はヤマハミュージックエンタテインメントHDの音響技術者・重田克美さん。スポーツでありながら、音楽や衣装を含めた高い芸術性が求められるフィギュアスケート。重田さんは、これまでNHK杯や全日本選手権など国内の主要大会で音響を担当してきた。後編ではリンクサイドで多くの選手の演技を見てきたなかで、この競技に魅了された理由や、音響のプロとして印象に残るスケーターについて語った。(取材・文=山田 智子)
◇ ◇ ◇
「フィギュアスケートというスポーツに関わっていると、時として奇跡を目の当たりにする瞬間があります。選手がこの瞬間に、この大会で何かが変わったとか、あれだけ頑張ってきたからここで上手くいったとか、そうした奇跡が目の前で起こる。何事にも代え難い瞬間に出会えるから、ずっとここにいたいと思うんです」と重田さんは目尻を下げる。
フィギュアスケートに携わって約10年。これまで目の当たりにしてきた“奇跡の瞬間”について聞くと、重田さんはソチ五輪直前の浅田真央を挙げた。
「目の前で見ていましたが、固唾を飲んでいたというか、こちらまでプレッシャーを感じながら見入っていました」
毎年見続けているからこそ出会える、成長という奇跡も眩しく映る。
「距離的にも立場的にも近いところにいるので、それぞれの選手がみんな頑張っているのも知っています。その結果としての輝きが見えるのがフィギュアの仕事をやっていて一番良かったなと思う瞬間です。
今シーズンで言えば、友野(一希)さん。今までは4回転を苦しそうに飛んでいるようなところがありましたが、今年は『こんなにも飛べるようになったんだ。素晴らしいスケーターになった』と感じました。(宇野)昌磨さんもすごく変わりましたね。今季は表情から気持ちから、すべて変わったのが見えました。
演技で言えば、羽生(結弦)さんのショートもそうなのですが、坂本花織さんの全日本のショートも本当によどみがなくて。僕は奇跡だと受け止めました」