間違いが許されないフィギュア音響技術者 「音が空気になる」舞台を求める仕事の矜持
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#19 連載「銀盤のささえびと」第2回・音響技術者前編
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
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連載「銀盤のささえびと」では選手や大会をサポートする職人・関係者を取り上げ、彼らから見たフィギュアスケートの世界にスポットライトを当てる。第2回はヤマハミュージックエンタテインメントHDの音響技術者・重田克美さん。荒川静香の『トゥーランドット』、浅田真央のラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』、羽生結弦の『SEIMEI』……。音楽を耳にするだけで、伝説の名演技が思い浮かんでくるファンも多いのではないだろうか。
スポーツでありながら、音楽や衣装を含めた高い芸術性が求められるフィギュアスケート。プログラムの世界観を形作る上で欠かせない「音」で選手を支える重田さんに、前編では仕事の哲学について聞いた。(取材・文=山田 智子)
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「音が空気になることを目指しています」
NHK杯や全日本選手権など国内の主要大会で音響チームを率いる重田さんは、自らが携わる仕事の理想の形についてこう語った。
「つまり、音が当然のようにそこにあるという状態ですね。選手がこう流れてくるものだとイメージしている音楽が、何も意識せず、安心してそこにあることが理想です。僕の担当は音響ですが、大会運営のチームの一員として、選手がのびのびと演技できる環境を作りあげることを目指しています」
フィギュアスケートでは1人の選手(1組)がショートプログラム、フリー(アイスダンスはリズムダンス、フリーダンス)の2曲を使用する。全日本選手権クラスの大会では100曲以上を管理し、どの選手の曲か間違えることなく大会の進行に合わせて再生することが求められる。特に五輪の切符がかかるような大舞台で、それを遂行するプレッシャーの大きさは想像に難くない。
「僕らがプレッシャーを感じるのは良くないので、そのために本番前の段階で下ごしらえをたくさんしておくんです」と、重田さんは事前準備の重要性を説く。
「まずは会場の設営に入るまで、次に選手から音源を集めて公式練習を迎えるまで、そしてその選手の音が出るまで。チームを率いる僕の仕事は、そこまで辿り着いてしまうと終わってしまうんですよ」と笑う。