高梨沙羅が追求する「日本刀で竹を斬る」速さ 10年来のトレーナーが知る進化の舞台裏
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載する。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#14 牧野講平氏が驚かされた高梨のひと言
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ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(クラレ)は北京五輪で悲願の金メダルを目指しているが、体調維持に欠かせないパートナーがトレーナーの牧野講平氏だ。高梨が15歳の時から10年にわたり、サポートしてきた。今季は過去2回の五輪の経験を糧に、プログラムを準備。コロナ禍で対面での練習機会が激減したなか、コンディションを高めるために取り組んだ二人三脚の歩みを聞いた。(取材・文=水沼 一夫)
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高梨のトレーナーを務める牧野氏は、大リーグの前田健太(ツインズ)やフィギュアスケートの浅田真央、テニスの錦織圭など、錚々たるトップアスリートの指導歴を持つ。高梨と五輪に挑戦するのはこれが3度目。長い年月の中で、収穫と課題を分析し、高梨の希望に合わせて最適なプログラムを組んできた。
北京五輪シーズンに突入した昨年春のオフ、高梨との打ち合わせで牧野氏は驚かされた。
「一番びっくりしたのは、『量をこなしたい』という言葉でした。ある程度、追い込みたいと。そこは今まであまり言われたことはなかったので」
牧野氏が高梨とタッグを組んだ初期の頃、体幹を強くする基礎的な鍛錬を繰り返した。地味な反復でハードなメニュー。高梨はそれをイメージしていた。
「若い時にベーシックなエクササイズをやった時、結構きつかったらしいんですよね。その頃の感覚をもう一度みたいな感じで、そういう意味で追い込みたいということでした。でも、彼女の体の能力もどんどん高くなっているから、どうしてもその頃の負荷を求めると、量をこなす必要がある」
当時に比べれば高梨の肉体は格段に進化。同じメニューでは追い込めないことは、高梨自身も分かっていた。だからこその「量」だった。25歳とアスリートとして脂が乗っているとはいえ、若い時に比べれば疲労も溜まりやすい。