[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

フィギュアのリンク完成に「徹夜で7日間」 ミリ単位で選手を支える製氷員の職人芸

危機乗り越えたアイスリンク仙台、大きかった羽生結弦の支援

 痛かったのは3月11日の本震より、実は4月の揺れだった。立ち入り禁止で検査ができなかった施設の天井や壁が落ち、配管システムが破綻。「やっぱり駄目なのかな……」と落ち込んだ。それでも、直営を決めた時の思いは消えなかった。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「仙台は100万人都市。ここで経営を続けることができなければ、どこでやってもできない。これからのスケート界がダメになる」

 未曽有の危機を乗り越え、何とか7月に営業を再開。3年後、施設で練習していた羽生結弦がソチ五輪で金メダルを獲得した。羽生からは、著書「蒼い炎」「蒼い炎Ⅱ」の印税の全額などを施設へ寄付してもらっている。その額は2021年3月までに、累計3144万2143円となった。

 日本では昨今、スケートリンクの減少が問題となっている。競技者だけでなく“底辺拡大”が加藤さんの願いだ。

「一般の方も滑れるよう、リンクを増やしたいという思いはあります。最近はスカイツリーだとか、商業施設や大阪の駅にも作っています。買い物したついでに楽しんでもらえたり、全体的にスケート人口を増やしたりしていかないと」

 今、スケート界を引っ張るアスリートの多くも、最初は楽しむことを目的にスケート靴を履いたはず。「楽しむ」という面で入り口を広げることが、将来のスター選手誕生に繋がるかもしれない。

【私がフィギュアスケートを愛する理由】

「彼(羽生)が金メダルを獲って、リンクを復活させて良かったと思いました。私はスピードスケートあがりですが、羽生選手の演技は本当に感動させられます。スポーツとしてだけじゃなくて、芸術としての魅力もある。あれだけお客さんが入るのは、限られたスポーツだと思います」(加藤商会・加藤松彦さん)

■加藤松彦(かとう・まつひこ)/株式会社加藤商会・代表取締役

 長野出身の58歳。小学生の頃からスケートを始め、野沢北高3年時には国体でスピードスケート男子500メートル、1500メートルで2冠を達成。明大でも競技を続け、卒業後に米国留学を経て加藤商会に入社。98年長野五輪では製氷員を務めた。07年、代表取締役に就任。直営のアイスリンク仙台など、日本各地のスケートリンクの管理・運営を行うほか、イベントリンクの設営なども担っている。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集