フィギュアは「採点競技だから」と言われたくない 五輪解説者・本田武史の葛藤と自負
五輪解説で心がける「はっきりと伝えること」
理解が進んだのはフィギュアスケートへの関心の高まりを示している。一方で葛藤するのは、フィギュアスケートならではの部分だ。
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「音楽の邪魔をしたくないという思いから、喋るきっかけが出なかったり。選手の良いところ、ハイライトは練習から見て探したりするけれど、演技によってはそこが出てこなかったりして話せなくなります。そこをなんとかしなきゃと思うけれど、中途半端なことは言えませんし、何も言わなくていいのかな、何か言ったほうがいいのかな、という葛藤はありますね」
五輪では2010年バンクーバー大会から3大会連続で解説を担当し、北京大会でも解説を担う。五輪は世界選手権などと異なるスタンスで伝えることを意図してきた。
「世界選手権は、どちらかというと、フィギュアスケートファンの方が観ていることが多いと思います。ただオリンピックは、普段は観ていなくても、中継されているから観てみようと、初めてフィギュアスケートを観る人たちもたくさんいます」
そこで心がけてきたのは、「はっきりと伝えること」だ。
「ノーミスで演技を終えてガッツポーズをしている。でも得点は伸びなかった、そういうケースがありますよね。『この人、良かったのに』と疑問に思うのではないでしょうか。そこではっきり伝えないと、どうして点数が伸びなかったのか分かりません。例えばジャンプの回転不足でも、『回転不足で点数が引かれています』とだけ言うのではなく、『基礎点が引かれている』とはっきり言う。あるいはミスしたのに上位に来る点数が出た時は、『こういうところが良かったからですね』と説明する。きちんと言わないと、『やっぱり採点競技だからね』と言われかねないし、そうは言われたくないですから」
ルールが確固としてあるスポーツであるという自負と誇り、それを理解してほしいという思いがそこにあった。
相対的に世界選手権は控えめになると言う。
「そこで言い過ぎると、ダメ出しみたいになってしまいますから」