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フィギュアは「採点競技だから」と言われたくない 五輪解説者・本田武史の葛藤と自負

本田氏が五輪解説で心がけるのは「はっきり伝えること」【写真:窪田亮】
本田氏が五輪解説で心がけるのは「はっきり伝えること」【写真:窪田亮】

五輪解説で心がける「はっきりと伝えること」

 理解が進んだのはフィギュアスケートへの関心の高まりを示している。一方で葛藤するのは、フィギュアスケートならではの部分だ。

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「音楽の邪魔をしたくないという思いから、喋るきっかけが出なかったり。選手の良いところ、ハイライトは練習から見て探したりするけれど、演技によってはそこが出てこなかったりして話せなくなります。そこをなんとかしなきゃと思うけれど、中途半端なことは言えませんし、何も言わなくていいのかな、何か言ったほうがいいのかな、という葛藤はありますね」

 五輪では2010年バンクーバー大会から3大会連続で解説を担当し、北京大会でも解説を担う。五輪は世界選手権などと異なるスタンスで伝えることを意図してきた。

「世界選手権は、どちらかというと、フィギュアスケートファンの方が観ていることが多いと思います。ただオリンピックは、普段は観ていなくても、中継されているから観てみようと、初めてフィギュアスケートを観る人たちもたくさんいます」

 そこで心がけてきたのは、「はっきりと伝えること」だ。

「ノーミスで演技を終えてガッツポーズをしている。でも得点は伸びなかった、そういうケースがありますよね。『この人、良かったのに』と疑問に思うのではないでしょうか。そこではっきり伝えないと、どうして点数が伸びなかったのか分かりません。例えばジャンプの回転不足でも、『回転不足で点数が引かれています』とだけ言うのではなく、『基礎点が引かれている』とはっきり言う。あるいはミスしたのに上位に来る点数が出た時は、『こういうところが良かったからですね』と説明する。きちんと言わないと、『やっぱり採点競技だからね』と言われかねないし、そうは言われたくないですから」

 ルールが確固としてあるスポーツであるという自負と誇り、それを理解してほしいという思いがそこにあった。

 相対的に世界選手権は控えめになると言う。

「そこで言い過ぎると、ダメ出しみたいになってしまいますから」

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本田武史


 1981年3月23日生まれ、福島県出身。14歳で全日本選手権初優勝を果たすと、98年長野五輪に16歳で初出場。2002年ソルトレークシティ五輪にも出場し、4位入賞を果たした。世界選手権で銅メダルを2度獲得したほか、日本人選手として初めて競技会で4回転ジャンプを3回成功させる偉業を成し遂げるなど、日本男子フィギュア隆盛の礎を築いた。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、テレビ解説者、そして指導者として後進の育成に力を注いでいる。

松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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