モンゴル人力士の活躍で興味 リーチ マイケルが発掘、ラグビー留学生「ノロブ君」とは
朝青龍、白鵬の活躍で興味「モンゴルの人がラグビーをやったら絶対強くなる」
理由はモンゴル相撲の存在である。15歳で来日以来、リーチが見た大相撲はモンゴル相撲出身の力士が席巻していた。「高校時代は朝青龍、大学時代は白鵬」。同じコンタクトスポーツ。あの屈強な下半身とハングリー精神がラグビーに転換されたらどうなるか、興味が膨らんだ。
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「朝青龍だったか白鵬だったか、インタビューで『日本では相撲のチャンピオンになれても、モンゴル相撲ではチャンピオンになれない』と聞いて、凄い世界だなと。日本の相撲は上下関係も稽古も厳しい。本当にタフじゃないとやっていけない。白鵬も15歳から日本語すら分からず日本に来て、チャンピオンになれた。モンゴルの人たちがラグビーをやったら絶対に強くなる」
15歳でニュージーランドから留学し、人生が変わった自分のように、日本で夢を追うモンゴルの若者を作りたい。20代から温めていたプランを行動に移したのは30歳を迎える2018年のこと。ツイッターでモンゴルラグビー協会を探し、自らの構想をメールで送ると、好意的な返信が来た。
わずか2か月後。代表合宿の期間中、合間にあった3日間のオフを利用し、宿舎からタクシーで直接空港へ。自費で現地に渡った。冬とあって「マイナス18度くらい。空港からの道中は砂漠のように何もなくて。でも、街中に行くと子供たちが平気でTシャツや短パンで過ごしている」と驚いたが、厳しい環境でも逞しく生きるメンタリティーはラグビーに繋がると直感したという。
実施したのはモンゴル相撲経験者を含め、20人を集めたセレクション。選考の第一条件にしたのが「ジャパンドリームを掴みたい選手」だ。「ちょっと恵まれないくらいの環境から来た方がよく頑張る」が、狙いだった。
そして、冒頭の話に戻る。ここで選ばれたのが、ウランバートル出身のノロブサマブー。「ダントツで興味があったのがノロブ君」とリーチ。「レスリングをやっていたけど、手がデカくて、ラグビー向きだと思った。本当に静かで、スポーツもそこまで経験なくて」。ラグビーのルールも知らなかったが、伸びしろの塊に映った。19年W杯の開幕戦に招待し、日本―ロシア戦を観戦してもらった。
2020年春、自身の母校である札幌山の手に留学。日本語も話せなかったが、リーチを育てた恩師・佐藤幹夫監督に支えもあり、教えをスポンジのように吸収し、成長した。頻繁に送られてくる相談事のメールやプレー動画に、リーチもアドバイスを返した。「コンタクトは怖がらないのが凄く良い」と選手としてのポテンシャルを感じる。
「タックルやディフェンスの痛いプレーも嫌がらずにやる。そのスキルがあれば日本で十分ラグビーができる。パスはやればうまくなるけど、怖がらずにプレーするのはトレーニングが必要だから。自然に持っている力。それをどう鍛えるかが今後は大事になる」
ラグビー歴2年足らずで立った花園。「モンゴルの子供を連れてきて、日本でラグビーをしてもらうという僕の夢が現実になった」という言葉通り、リーチにとっては格別の喜びになった。