[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「粗野なれど、卑にあらず」 生涯修行を貫き、五輪連覇した最強柔道家・大野将平の魂

大学院時代まで読書をしていた大野が敢えて今しない理由とは【写真:荒川祐史】
大学院時代まで読書をしていた大野が敢えて今しない理由とは【写真:荒川祐史】

大学院時代までしていた読書を敢えて今しない理由とは

 大野は決して性善説に立った美談のようなストーリーを求めない。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「我々の競技もスポーツではあるけど、格闘技でもあるわけです。言い方は悪いですが、相手を蹴落としていく競技。人として“悪”の部分は必ず誰しも持っていて、それをどの方向に使うか。私自身、自分の弱さを知っているからこそ、強くあろうとするんじゃないかと思います」

 思考の深いアスリートは読書を好む者が少なくない。過去の成功者の言葉に触れ、競技に生かす。実際、大野も大学院時代は武道にまつわる本から、宮本武蔵が著した兵法書「五輪書」まで読んだ。しかし、今は敢えて本を読まないようにしている。

「本を読んでいると、その方向に引っ張られる感じがある。内容が面白ければ面白いほど、そこに書かれているパワーワードに引かれて、自分がそっちに行ってしまう。自然と、それが自分自身のテーマになってしまう。

 でも、本ごとに書かれてある大切なことは違ってくるもの。だから、自分の言葉を大切にしたいと思って、この4年くらいは本はやめました。もちろん、本を読むことは素晴らしいですが、あくまで自分は自分なので」

 だから、五輪連覇への挑戦も自分だけのストーリーを大切にした。

「五輪連覇も自分にしかない道。天理大の先輩である野村忠宏さんが3連覇をされていますが、その真似をして自分も連覇できるかというと、そうではない。本を読んで影響を受けたり、誰かの真似をしたり、それは違うと私は思いました」

 これまでも聞き手が感銘を覚える言葉を残してきた大野。今後はどんな言葉を紡ぎ、どんな人生を歩んでいくのか。本人は「そんな、たいそうなことは思ってない」とやはり謙虚に振る舞いながらも言った。

「人にどう見られたいとかはない。自分自身がどうあるべきか。私自身は一生修行だと思っているので。完璧な人間を目指しているわけでもない。どういう言い方していいか分かりませんが、ミステリアスだけど、何か興味をそそるような人でありたいと思っています」

「正しく組んで正しく投げる」を標榜する大野はリオ五輪以降、実力ある選手にすら距離を取られ、組み合わない戦いに「つまらなさ」を感じた。美しい柔道との決別を余儀なくされ、練習では「どうすれば自分は負けるのか」を徹底して考え、自らを追い込み続けた。

 凡人に想像のつかない孤独な世界。つらさはないのか。そう聞くと「大野将平がイコール、そうなってしまった」と言う。

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集