誰よりも好かれたランナー福士加代子 現役最後に知った感覚「私からありがとう、と」
現役最後の日に見た景色「スポーツは希望を持てるものなんだ」
自分に嘘をつかない。そんな人間性は走りに滲み出る。速い、強い、面白い、ひたむきで諦めが悪い。弱いところも正直に見せてしまう。だから、みんな好きになる。セレモニーには増田明美、有森裕子、高橋尚子、野口みずき、千葉真子のマラソンオールスターがサプライズで花束贈呈。同じ時代をともに戦った渋井陽子、小崎まりも駆け付けた。
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先輩たちから抱えきれないほどの花束を受け取った本日の主役。「すごい! レジェンド! 写真! 写真!」。日本が誇る名選手たちの真ん中で豪快に笑った。
「心残りはないです。走るのが楽しかったので。思うようにできずに勝負になっていないと思うようになったので、ズルズルになってもしょうがない。一番いいところを知っているので、そこまで行く気力も見えない。もうそこはいいかなって。思っていた引退とは違いましたけどね。やっぱりダメにならないと終われないんでしょうね」
今後は高校卒業から22年所属したワコールに残り、企画やイベント出演などにも携わる。沿道から、同じコース内からも声援が聞こえてきた現役最後の日。想定外のレースで初めて見えた景色があった。
「今日はランナーを見ていて『希望を持てる』と思った。最後の方は『頑張ってください!』って言われて、スポーツは希望を持てるものなんだと。ランナーが一生懸命に走る姿、一緒に走る空間を見ていたら面白いなって。これが希望というものなんだと。陸上は希望が持てると思う。苦しい中でも楽しかったです。逆に、私からありがとうと思って走れた」
意図せずとも、今までどれだけの人に「希望」を与えてきたことか。誰よりもファンの心を掴んで離さなかった偉大なランナー。スタンドからは「ありがとう」の声が響いていた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)