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日本一速く走れる文学少女 SNSで文章力がバズった陸上・田中希実の人生を変えた一冊

陸上女子中長距離の田中希実(豊田自動織機TC)が「THE ANSWER」のインタビューに応じた。全3回にわたってお送りする第3回は「読書論」について。昨年の東京五輪1500メートルで日本人初出場を果たすと、決勝で8位入賞の快挙を達成。3種目で日本記録を持つ22歳は、幼い頃から読書好きの文学少女だった。

田中希実が本にのめり込んだ理由、小学生時代の「下心」が始まりだった【写真:奥井隆史】
田中希実が本にのめり込んだ理由、小学生時代の「下心」が始まりだった【写真:奥井隆史】

田中希実の独占インタビュー第3回

 陸上女子中長距離の田中希実(豊田自動織機TC)が「THE ANSWER」のインタビューに応じた。全3回にわたってお送りする第3回は「読書論」について。昨年の東京五輪1500メートルで日本人初出場を果たすと、決勝で8位入賞の快挙を達成。3種目で日本記録を持つ22歳は、幼い頃から読書好きの文学少女だった。

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 自己啓発本や自叙伝を好むアスリートが多い中、なぜ文学にのめり込んだのか。五輪後には自身のことをつづった文章がツイッター上で反響を呼んだ。人生を変えた一冊から、読書によって得たものなど今のランナー人生に通じるエピソードを紐解いてもらった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 昨夏、一本の文章がネットをざわつかせた。スポーツ界の取り組みや想いを未来に伝えるプロジェクト「#アスリートがつなぐ」。ツイッター上でOB、OG、現役選手が「#〇〇をつなぐ」をお題に言葉を発信した。

 東京五輪後、田中も「#物語をつなぐ」と題して参加した。

「一人一人、物語をもっている。私にも、両親から始まる人の縁が織りなす壮大な物語がある。私自身、その一部しか知らない。物語は物語を生み、私にとっては知りえない外伝でも、それ一つで立派な物語が、どこかで生まれている。私にとっては両親が始まりでも、両親にとってはまた、始まりとなる物語があるのだ。私の物語は、誰かに繋がったろうか。私も両親のように、物語を作れているのだろうか」

 五輪までの苦しみや自責の念など、心の葛藤を赤裸々に表現。幼い頃から五輪までの陸上人生を振り返る「物語」だった。シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子さんが田中の文章をツイッターに公開すると、ネット上を駆け回るように拡散。内容もさることながら、細かな言葉の使い方や構成など「文章力」も話題を集めた。

 おおよそ1500文字の一本に、どれだけの労力を要したのか。周囲の熱とは対照的に、作者は事もなげに明かした。

「いや、あれはもう普通にパッと降りてくるというか……。(普段の心情などを)携帯のメモに打っていたので、テーマさえ決まればすぐにできた感じです。最初はどういうテーマにするかわからなくて、ありきたりなものは避けようと思いました。

 自分らしさを出しつつ、どういうテーマにするのがいいのか。(最終的に選手たちの作品は)本になるので、『#物語をつなぐ』がいいんじゃないかなと。物語にするなら、オリンピックに関してどんな物語があるのか考えました。大学まで父に車で送ってもらうんですけど、その時に1時間ちょっとでバーっと書けました」

 田中が出会った本の世界。物語のプロローグにあるのは「下心」だった。小学3年生になった時、担任についたのは国語の先生。ある日、みんなでお気に入りの本を紹介することになった。「赤毛のアン」「大草原の小さな家」「アルプスの少女ハイジ」。純真無垢な少女は次々とページをめくった。「そんな本を知ってるんだ」「すごいね」。ただただ、褒められたい。クラスメートの声に嬉しくなった。

「本の紹介が楽しかったのが始まりです。当時は走りに自信があるわけではなかったので、何か自分のアイデンティティーを探していたんだと思います。読書が好きで、こんなに本が読めるというのを自慢したかったのかなと」

 次第に本の世界へと惹き込まれた。読みながら登下校するのが日課に。「この本、みんなに知ってほしいな」。しかし、ある時から“歩き読書”は禁止された。少しでも早くあの世界に飛び込みたい。兵庫・小野市の家は学校から2.5キロくらい。走って帰り、自然とランナーの礎ができていった。

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