突き動かす亡き親友・平尾誠二への思い 日本ラグビーの未来担うリーグワン理事長の情熱
異色のビジネスマン玉塚元一理事長(ロッテホールディングス代表取締役社長)が、陣頭に立って、2022年1月7日の開幕へ向けて準備を進める「NTTジャパンラグビー リーグワン」。日本ラグビーの構造改革とも期待される新リーグで、玉塚理事長は何に取り組み、何を実現したいのか。ラグビーへの恩返しの思いとともに、経営者の視点から見る日本ラグビーの課題と未来のあるべき姿を語ってもらった。(取材・文=吉田 宏)
リーグワン玉塚元一理事長インタビュー後編、ラグビーへの感謝と生涯の友の存在
異色のビジネスマン玉塚元一理事長(ロッテホールディングス代表取締役社長)が、陣頭に立って、2022年1月7日の開幕へ向けて準備を進める「NTTジャパンラグビー リーグワン」。日本ラグビーの構造改革とも期待される新リーグで、玉塚理事長は何に取り組み、何を実現したいのか。ラグビーへの恩返しの思いとともに、経営者の視点から見る日本ラグビーの課題と未来のあるべき姿を語ってもらった。(取材・文=吉田 宏)
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リーグワン理事長としての挑戦に「恩返し」という言葉を使った玉塚氏が、楕円球を追っていた時代からを回想するように語り始めた。
「僕がもしラグビーに出会っていなかったら、本当にどうしようもなかったと思います。でも、ラグビーに出会って、ラグビーのおかげでそれなりの人間になり、それなりの根性がつき、それなりの挑戦心もついた。何よりも、大学4年の時に平尾(誠二)くんたちと決勝で戦って、負けたけれど、素材としてそれほど優れていなくても諦めなければ、努力をすれば巨象も倒せるという体感ができたのは、その後の人生においても、ものすごく大きかった。ラグビーに出会えていなければ、そんな経験はできなかった。それと僕自身が思うのは、負けた試合から学ぶんですよ。勝った試合よりも。あそこで僕らが勝っていたら、調子に乗って、また違う人生だったかもしれません」
大学選手権決勝で死闘を演じた同い年の平尾さんとは、2016年に亡くなる直前まで親友として交遊が続いた。
「不思議なヤツでね。病気になってからは、格好つけて同志社の仲間にあまり会わなくても、僕とか村井大次郎(同期の慶大FB)とかには声をかけてくる。『玉塚くん、寿司食いにいこうや』と。すごく痩せちゃって、でも、一緒に寿司食ってね」
途切れた言葉に無念の思いが滲む。神戸製鋼、日本代表での活躍後、日本協会理事なども歴任して日本ラグビーを背負う男と言われた平尾さんは53歳の若さで世を去ったが、命日には毎年、玉塚理事長をはじめ37年前に死闘を演じた敵味方が集まり、盟友が眠る神戸の墓地を訪れている。
「僕のポジションは平尾がやらないといけないんですよ。本来はね」
生涯の友であり宿敵。そんな平尾さんが果たせなかった夢を実現させたいという強い思いも、敏腕ビジネスマンを新リーグの立ち上げ、そして成功へと突き動かしている。