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慶大ラグビー部時代に伝説の決戦 ロッテ社長など歴任したリーグワン理事長の異色の人生

玉塚氏はラグビー新リーグの挑戦を「ラグビーへの恩返し」と語った【写真:吉田宏】
玉塚氏はラグビー新リーグの挑戦を「ラグビーへの恩返し」と語った【写真:吉田宏】

“二刀流”への挑戦は「ラグビーへの恩返し」

 積み上げてきた経験が、企業の新たな可能性を見出し、再生、進化させていく経営者としての経験値と手腕を磨き、ロッテHDからの誘いにも繋がっている。

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「ロッテは、韓国では約8兆円のコングロマリット(巨大複合企業)です。百貨店からホテル、化学、金融と事業を展開している。日本ではお菓子を中心としたところに留まっていて、3500億円くらいの商売なんですが、もっとポテンシャルはある。もっと成長させる、その土台を作る、カルチャーを変える。それをやってくれないかと重光昭夫会長からお声がけいただいたんです。

 日本のロッテは、この10年、残念ながらほとんど成長できていませんが、キャッシュフローがある。ガーナチョコレートやキシリトールガムというメガブランドがあるからです。でも、そこに甘えもあったし、新しいものに挑戦できない、いろいろな問題もあった。それを全部取っ払って、新生ロッテとしてチャレンジをしていくぞというステージにちょうどなっている。僕は、ものすごく可能性があると思いますね」

 大企業をさらに成長させていく大役を続けながらの、ラグビー新リーグでの挑戦。ビジネス上、そして外からロッテという企業に飛び込んできた経営者として、このような“二刀流”をどう考え、受け止めているのだろうか。

「これからのリーダーにとって、自分自身の多様性はすごく大事だと思うんです。例えば、女性の幹部を何割にするかというのも多様性だけど、リーダー自身が多様な体験、多様な感度を持つことがすごく重要で、もちろんロッテの仕事はフル回転でやりますけど、他にもベンチャーの会社をいくつか応援していますし、上場、非上場の企業の取締役もやっています。今回のリーグワンのように全く違うスポーツ業界でも戦っていくわけですけど、それによって多面的な、ものすごい情報が僕に入ってくる。僕自身が多様な個でいられるんですね。これが組織のリーダーにとっては、すごく重要です。ロッテHDの取締役会でも皆さんに相談して、了承をいただいてチャレンジすることになりました」

 新リーグの立ち上げも、玉塚理事長にとっては、ビジネスフィールドで“取っ組み合って”きた企業や事業と共通するものがある。

「今回のリーグワンの立ち上げというのは、ベンチャー企業の立ち上げみたいなものです。新しいやり方でやっていくわけだけど、仮説を立てて、実行して、上手くいったものは徹底的に広げるし、上手くいかなかったら修正するというサイクルを回して、リーグのあるべき方向性を見つけていく。それがヨーイドンで始まろうとしている。もう現場は始まっていますけどね」

 ビジネスマンとしてのマインドが、新リーグ立ち上げへの挑戦を後押ししたのは間違いないが、それ以上に玉塚理事長を突き動かしたものもあった。

「一言で言うとラグビーへの恩返しです」

 この言葉には、ラグビーに育てられた自身の成長と、盟友であり宿敵だった故平尾誠二さんへの思いが込められている。後編では「恩返し」という思いと、ビジネスマンという観点から玉塚理事長が見る新リーグ成功への課題と可能性に踏み込んでいく。

(1月2日掲載予定の後編へ続く)

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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玉塚元一

一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン理事長 
1962年5月23日生まれ、東京都出身。中学からラグビーを始め、慶應大でフランカーとして活躍。1984年度の全国大学選手権で準優勝した。卒業後は旭硝子(現・AGC)へ入社しビジネスマンとしての第一歩を踏み出すと、ファーストリテイリングやローソンなどのトップを歴任。現在はロッテホールディングス代表取締役社長を務める傍ら、今年10月に一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンの理事長に就任した。

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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