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ゴミ拾い、倒れた他人の自転車も整頓 「運」も求めたボクサー谷口将隆の世界王座奪取

THE BLUE HEARTSの「TRAIN-TRAIN」に乗って入場する谷口【写真:荒川祐史】
THE BLUE HEARTSの「TRAIN-TRAIN」に乗って入場する谷口【写真:荒川祐史】

THE BLUE HEARTSを選んだ理由とは

 確かな成長を見せた試合だった。2回、クリンチが続いた後、左がメンデスのテンプルを捉えた。「クロス気味の左はずっと練習していた」。王者は尻もちでダウン。谷口は中盤に主導権を奪われそうになっても、脳みそを使った。「なんでそうなったかをまず考えた。ここで引いたら逃げられる」。試合をつくると、9回には接近戦から左ボディーをくらわせた。

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 11回開始直前、両拳を振り上げて7000人の観客を煽った。上半身をかがめた相手の顔面に左の打ち下ろしをお見舞い。王者の膝がわずかに折れた。「今や!」。コーナーに追い詰めて畳みかけた。クリンチに逃げようとする相手を振りほどいて猛ラッシュ。11回1分8秒。レフェリーが試合を止め、新王者が誕生した。

 コーナーに上り絶叫。162センチの小さな体では表現しきれないほど大きな喜びを爆発させた。「2年前の自分よりずっと強くなれたかなと思う。ようやく自信が持てました。正直、夢心地ですね」。陣営の伯耆淳トレーナーも「詰めるべきところで詰められるのは非常に成長した。『出ろっ!』って言ったら出たので、凄いよかった」と労った。

 谷口は同門で同い年のWBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人と切磋琢磨。親友には今回もセコンドに入ってもらい、的確なゲキを受けた。姉3人、弟2人を持ち、6人きょうだいの4番目。ジムでも周りに可愛がられるキャラ。入場曲を選んだ理由は「シンプルにかっこいい。みんなが知っている歌は盛り上がる」と観客を意識した。新王者は2度目の世界挑戦を終えて実感したことがある。

「今回の世界戦でわかったんですけど、世界戦ってチーム力が凄い大事なんだと思いましたね。試合が決まった時から思っていたんですけど、トレーニングを続けて、盛り上げてくれる人もいたり、試合当日にサポートしてくれる人たちとか、いろんな人に支えられて試合ができるなと改めて思います。みんなが自分のことのように喜んでくれるのがほんまに嬉しい」

 コロナ禍の試合開催。対戦相手が来日したのは、オミクロン株の世界的な感染拡大を受け、外国人の入国が原則禁止される直前だった。「世界チャンピオンになるには運も大事。ゴミを拾ったり、自転車を起こしたりしていてよかった」。栄光に向かって走る世界王者。これから防衛ロードを歩んでいく。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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