あの日、拳四朗に飛んだ「クソガキ」の野次 切に思うボクシングの「もう一つの魅力」
「這い上がる姿」が美しいのもボクシングの魅力
アマチュア時代はボクシングの傍らボートレース選手を目指したが、試験に2度失敗。騒動の後は「ボクシングはもう終わったと思った」と覚悟した。世界王者になり、もうこれしかない。「変わらず応援してくれた方がたくさんいた」。周囲にも、試合を待たせた挑戦者にも何度も謝罪。ライセンス停止処分、社会貢献活動を経て再びリングに立つことを許された。
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「負けたら人生終わりだった。負けられない。覚悟があった」。何事にも動じない、フワフワとした口調そのままの性格。つかみどころがなく、何度取材しても考えていることが読みづらい。そんなキャラクターだからこそ、素直に感情を露わにしたリング上の涙が印象的だった。
井上尚弥のようにKO街道をひた走る完璧な選手、村田諒太のように人間臭さを醸し出しながら決める豪快なKO、井岡一翔のように豊富な経験に裏打ちされた技術で勝ち切るスタイル。もはや好みの違いで、どれも一興がある。
被害者もいる自業自得の過ちを美談にするわけではない。でも、這い上がる姿が美しく表現されるのもボクシングの魅力の一つだと思う。
9月のV9戦(京都市体育館)、寺地は矢吹正道に10回TKOのプロ初黒星で王座陥落。具志堅用高氏の日本記録V13を超える目標は潰えた。2か月後の11月下旬、再起を表明。矢吹とのダイレクトリマッチに向かう見通しだ。
一度の失敗にあれこれ言う人はこれからもいるだろう。結果を出せば済むわけじゃない、という人もいて当然だ。それでも、結果を出すしか道はない。這い上がる姿を見せてほしい。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)