[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

史上最も「結果」を残した内村航平 「結果はどうでもいい」と言い放つ最強選手の境地

2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートする。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第3回は、体操・内村航平(ジョイカル)が登場する。鉄棒6位に終わった10月の世界選手権(福岡・北九州市立総合体育館)。結果を度外視した姿勢に歴代最強選手の境地を見た。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

結果以上のものを追求する内村航平の境地とは【写真:Getty Images】
結果以上のものを追求する内村航平の境地とは【写真:Getty Images】

一人の記者が届ける「THE ANSWER」の新連載、第3回は体操・内村航平

 2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートする。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第3回は、体操・内村航平(ジョイカル)が登場する。鉄棒6位に終わった10月の世界選手権(福岡・北九州市立総合体育館)。結果を度外視した姿勢に歴代最強選手の境地を見た。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 ◇ ◇ ◇

「今日やってみて思ったけど、結果は本当にどうでもいいんだなと思った」

 五輪と世界選手権を合わせて個人総合8連覇。40連勝の金字塔を打ち立て、果てしなく勝ち続けた。誰よりも「結果」を残してきた内村が言うからこそ、この言葉は重みを増した。

 人数の上限を設けない有観客で行われた世界体操。32歳の大ベテランは、種目別予選から2721人の視線を真っ向から受け止めた。

 バーを掴み、ゆっくりと勢いをつける。全身の神経を研ぎ澄まし、回り始めた。静寂に包まれた中、H難度の離れ技「ブレトシュナイダー」を披露。拍手が爆発的に鳴った。着地までまとめた瞬間、この日最も大きな喝采。そばで声を枯らした橋本大輝、萱和磨の日本代表の後輩たちも跳びはねた。約50秒の演技に込めた「魅せる」という信念。観客席では「KING KOHEI」の横断幕が上下左右に揺れた。

「これだよな。これが試合だよな」

 生まれ故郷・北九州の拍手が胸にしみた。いつも以上に沸いたのは“普通の予選”ではなかったからだ。88日前、東京五輪は予選でまさかの落下。メダルはおろか決勝にすら進めず、9月の全日本シニアは着地で尻もちをついた。両大会とも無観客。久々に見られる「生」の内村をみんなが待っていた。

 内容には「良かった部分は正直一個もない」と納得いかなかった。確かに離れ技で肘が曲がるなど、完璧主義者が追い求める内容とは程遠い。それでも、体のあちこちに痛みがある中、五輪で見せられなかった「どうなっても落ちない、最後の最後までやり切る」というファンを意識した目標はクリアした。

 4日後の決勝もまた、視線を独り占めした。大技は完璧ではなかったが、誰よりもこだわってきた着地は微動だにしない。演技を控える海外選手たちも手を叩き、この大会で最も大きな拍手が降り注いだ。それほどの美しさがあった。「会心の一撃だと思う。あれだけの着地で自分の気持ちが高ぶった」。主役は噛み締めるように両拳を握り、右腕を力いっぱい突き上げた。

1 2
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集