教員の「部活指導負担」問題は解消できるか やりたい人の“指導する権利”も守る米国
外部指導者より教員を優先する米国
別の調停ケースでは、野球部のコーチ経験のある教員が、ソフトボール部の指導を希望した。しかし、学校の管理職は外部からのコーチをソフトボール部の指導者に迎えた。そこで、野球部のコーチ経験のある教員が、教員を飛び越えて外部から指導者を迎えたことは協定に反するのではないかと不服申し立てをした。
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たしかに、野球とソフトボールとはいくつかの類似点のある種目ではある。しかし、ソフトボール指導経験のない教員は適任とはいえず、外部からソフトボールの指導者を迎えることは労使協定に反していない、と判断された。
この他にも、アメリカンフットボール部のコーチ職から解任された教員がこれを不服とした。教員としては終身雇用資格を得ていても、運動部のコーチには終身雇用資格は適用されないとされ、コーチという役割を解くことは違反ではないとされた。
米国では、外部の指導者を探す前に、部活動指導を希望する教員を募る。それはできるだけ、教員に引き受けてもらいたいという学区や管理職側の意思の表れだ。しかし、それだけでなく、部活動指導を希望する教員には、優先的に部活動指導者のポジションを得られるように配慮しているともいえる。
わずかな金額であっても指導報酬の発生する仕事でもあり、外部の指導者が簡単に仕事を奪われないようにすることも、教員の働く上での権利として盛り込まれているように見える。
※参考資料「The Impact of Teacher Collective Bargaining Agreements on High School Coaches」
(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)