東京五輪の価値を子供にどう伝えるのか 陸上メダリストの答え「前向きに行動する事」
今の子どもは五輪に興味があるのか「みんなスマホを見ています」
今の子どもたちは五輪・パラリンピックのことをどう思っているのか。前回の16年リオ五輪以前と、受け入れられないまま迎えた特別感のある東京五輪。夢舞台への目線は変わったのか。
大人たちの批判的な意見について「みんないろいろなことを知っていると思いますけど、大人ほど自分事として考えてないんじゃないですかね」と朝原氏。クラブの子どもたちの温度感を踏まえた上で、朝原家の熱量について教えてくれた。
「僕らの世代みたいにみんなが見ているという感じではないと思います。別にオリンピックを見なくても、スマホでいろいろなコンテンツがあるので。テレビでやっていますが、テレビを見ないじゃないですか。うちの夫婦はテレビでずっとオリンピックをつけていますけど、子どもたちはみんなスマホを見ています」
朝原氏は高校3年の長女、中学3年の長男、小学4年の次女を持つ。妻は1992年バルセロナ五輪シンクロナイズドスイミング・銅メダリストの奥野史子氏。スポーツの世界で生きてきた夫婦は熱中しているが、子どもたちはそれほどでもない。しかし、自分が何かしら触れたことのある競技に関しては別だという。
「『ハイキュー!!(バレーボール漫画)』とかが流行っているじゃないですか。だから、長女はバレーボールにはすごい興味があって、その時だけはオリンピックを見ています。息子はスケボーをやっているのでスケボーは見る。興味が分散しているけど、注目しているものはある。子どもたちは自分が関わると、わかりやすく興味を持ちますね」
時代とともにコンテンツの隆盛は変化していく。一昔前のように「五輪だから」といって、国民全体の注目が集中する時代ではないのかもしれない。若者人気を意識した国際オリンピック委員会(IOC)は、東京五輪でスケートボード、サーフィンを新種目に承認。24年パリ五輪ではブレイクダンスを新たに採用したように、現状打破へ動き続けている。
朝原氏は「データとかはないので肌感覚ですが、若者の五輪への意識は少しずつ変わってきているのかなと思います。今回、有観客でもっと盛り上がっていたら、もう少し違っていたのかな」と想像する。スポーツ界の人間として危機感があることは否めない。だからこそ、オリンピアンとして「五輪」と「子ども」を繋ぐ必要がある。
「五輪は知っていて、オリンピアンがすごいということも知ってくれているけど、自分のこととしてなかなか捉えられないことが多い。例えば、僕がやっているクラブはオリンピアンが主宰して、(指導者には)僕を入れてオリンピアンが3人いる。そういう意味では、子どもたちも指導を受けていることを誇りに思ってくれたり、五輪に興味を持ってくれたりする。そういう機会を増やしていかないといけないと思います」