ロッテ荻野貴司はなぜ故障しなくなったのか スピードと引き換えに軽減された体の負担
スピードと引き換えに手に入れたもの「今の状態もいい」
圧倒的なスピードを武器に、ルーキーイヤーの2010年は46試合で驚異の25盗塁をマーク。球界屈指の凄まじい出力を生み出す代償に、体への負担は大きかったのかもしれない。それが3年ほど前から、少し状況が変わってきた。
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「盗塁のスタートが切れないときが増えたり、切れてもアウトにされたり、自分のイメージと変わって来ているなと感じますね。今まで出ていたスピードが出なくなった分、ちょっと体の負担が減ったような気がします」
あの唯一無二の脚力が衰えつつあることは、本人にもファンにとっても喜べることではない。可能ならスピードを保ったまま、全試合に出場できれば最高だとも思っている。ただ、悪いことばかりではないのも事実。欠かせない1番打者として、毎試合グラウンドに立てているから「今の状態もいい」と受け入れられている。
以前よりスピードが出なくなったとはいえ、今季もここまで17盗塁を決め、入団から12年連続2ケタ盗塁という球団新記録を達成。まだまだ足は大きな武器だ。長くなったプロ人生を支えているのは、ある大怪我で得た忘れられない出来事だと語る。
打率.326と打撃も好調で、新人王間違いなしと言われていた1年目。5月21日のヤクルト戦で初回に二盗を成功した時、右ひざに経験のない感覚を覚えた。「何だ、この変な痛みは」。この試合はフル出場したものの、試合後に病院で検査。半月板損傷と診断された。
無我夢中、がむしゃらにプレーしていた当時。試合後の悔しさは当然あったが、はっきりとは覚えていない。ただ、この怪我で体の大切さに気付き、リハビリ中も強い体を作るためのトレーニングを十分に積み、学ぶことができた。
「あの時怪我したから、もしかしたら長いことプロ野球生活ができているかもしれないですね。もし順調に行っていたら、もっと早く終わっていたかもしれない」。プラス思考で、実直な人柄。怪我は多くても、その度に「この時間を使ってレベルアップできることはある」と考え、無駄にしなかった。今の荻野は、その積み重ねでできていると言って過言ではない。