「試合中に敬語使ったらぶん殴る」 松田直樹とマリノス黄金時代を生きた3人が語る素顔
松田さんのすごさは「スイッチが入ったらスーパーサイヤ人みたいになる」
――そのときの松田さんの反応は?
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栗原「『行けねえだろ』と言うから、『いや、行けんだろ』と。練習試合が終わった後に監督の早野(宏史)さんが『マツ、お前が悪いぞ』と言ってくれて、自分の指摘がやっぱり当たっていたんだな、と。とにかく人に厳しく、自分に甘いから、要はよくサボるんですよ。那須さん含め、他の人とよく言い合っていたのは俺も何度も目撃した。ただ、肝心なところはしっかりと押さえるから、やられたのは若造のところだろとファン・サポーターは思っちゃうわけ。確かにそれもあるんだけど、一方で、アンタがサボっていたからやられたところもあるっていうのは、守備の人ならみんな分かっていた。ただ、力があるから、やるときにやれちゃう。マツさんは見せ方がうまいところもあった」
坂田「俺はマツさんの隣でプレーしていたわけじゃないから、サボる、サボらないのところは見えていないところもあるけど、攻撃もすごかったな。ドリブルで持ち上がって、トーキックで決めた試合もあったし」
栗原「他のチームからは『松田が上がったときはチャンス』と言われていて、実際に耳にしたこともある。でも、ときたま訳の分からないすごいシュートが入ってしまう(笑)」
坂田「(上がってくると)また後ろから来たぞ、とは思う。パスは出てこないだろうけど、一応プルアウェイしておくか、と。だってマツさんは周りを見てなくて、前だけ見ているからね(笑)」
那須「そうそう(笑)」
栗原「マツさんがドリブルしていると、花道のように前がパッと空いたりするんだよな。ああいうのは真似しようと思ってもできない。プレーの大胆さも図抜けてるよ」
那須「『ドラゴンボール』の孫悟空のように、スーパーサイヤ人みたいになるときがある。スイッチが入ったらすごい(笑)。とんでもないシュートを決めるとか、DFなのにこんな感覚もあるんだって、驚かされた」
――プレー以外で「この人すごいな」と思ったのは、どんなところでしたか?
坂田「残留争いに巻き込まれた2001年に、マツさんが『一体感ないとダメだ。みんな金髪にしようぜ』と。先輩方もいるなかで、24歳のマツさんがパッと決めてみんなに伝える。あのとき、前泊でコンビニに行くのはナシ、とか、選手ミーティングするから何時に集合とか、いろいろと決めごとを作っていた。本当に一体感が生まれたかどうかは別として、発信したり、人を巻き込んだりするところはすごい。みんな髪、染めましたからね。マツさんより年上の(上野)良治さんは『俺、(金髪にしようと)やったけど、うまく染まらなかった』と言っていたけど」
栗原「あの良治さんがそう言ったならすごいこと。俺には関係ないって全くやらなかったのと、やろうとしたけどできなかったのとでは全然違うから」
那須「人を巻き込むのがとにかくうまいよね。僕も2年目から試合に出させてもらって、タメ口でぶつかってヤル気にさせてくれた。周りを気づかないうちに巻き込んでいたり、ヤル気にさせたり、そういうのがマツさんにはある」
栗原「それにあの人は上の人に媚びない。逆に先輩に対して男を見せたりするから、先輩たちはちょっと煙たかったもしれない。でも後輩から見るとすごいなって思った。ただ、これって時代(背景)もある。日本代表でも(フィリップ)トルシエ監督やジーコ監督に反発して、途中で帰ってきたこともあった。あの頃は『松田やるな』って武勇伝として捉えられる雰囲気もあって存在感やカリスマ性みたいなところが強くなったけど、多分、今なら『松田、もっと大人になれ』っていう反応だと思うから」
坂田「強がっているけど、一方で寂しがり屋。常に誰かと一緒にいるイメージだったな」
那須「そうそう、寂しがり屋。外から見ると、闘将とか熱いイメージが強いようだけど、公私一緒に過ごした人は、みんなマツさんが寂しがり屋だって分かってる」
栗原「意外でも何でもなく、弱音とかも普通に出してくるし。(感情を)隠さない、本当にストレートな人」