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兄と慕った松田直樹との別れ 天野貴史の10年目「名前を呼ばれる声が耳から消えない」

2009年のイベントで松田さん(中央)と交流する天野さん【写真:本人提供】
2009年のイベントで松田さん(中央)と交流する天野さん【写真:本人提供】

マツさんから受け継いだ3つの教え「プロとはこういうものだ」

 あの頃の僕らは、竜二さん、田中裕介(現ファジアーノ岡山)とマツさんと4人でしょっちゅう洋服を買いに行ってはご飯を食べて、熱い話をする。それが楽しくて仕方なかったです。でも、その時に「プロというのはこういうものだ」というものを3つ、教わったような気がします。

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 サッカー選手は小さい頃からサッカーしかやってきていないし、大人になってからも、練習して、週末に試合をして……と、子どもの頃とやっていることがあまり変わらないんです。

 そんななかで一番大きく変わるのが、“プロである”ということ。Jリーグでは、チケットを買って試合を見に来てくれるお客さんがいる。その人たちに感動を与えられるようなプレーを心掛けないといけないし、最後まで諦めずに戦い続けるがむしゃらなプレーを見せないといけない。

 横浜F・マリノスってマツさんだけじゃなく、本当にサッカーがうまい人が多くて。僕なんてうまくなかったから、気持ちの面で負けちゃいけない、熱い気持ちを前面に出さなきゃいけないと思ってプレーしていました。だから、マツさんがいつも誰かに僕を紹介する時、「こいつ、サッカーはそんなにうまくないんだけど、熱いもんを持っていて、気持ちで絶対に負けない選手なんだよ」と言ってくれて。それがうれしかったんですよね。

 勝負に対するこだわりも教わりました。試合はもちろんですけど、練習中に行うリラックスゲームでも負けたくないから、負けていると怒るし、機嫌も悪くなります。まあ、そこはサッカーだし、まだ理解できるんですけど、プレイステーションの『ウイニングイレブン』でも負けるとめっちゃ怒ります(笑)。『ウイイレ』は複数人で同時にプレーできるので、マツさんと同じチームになると、それはもう震えるほどでしたね(苦笑)。何事にも、勝負事は常に勝たないといけないっていう教えです。

 そして、結果を残すこと。Jリーグの舞台で結果を出さないと生き残っていけない。そういうプロの世界の厳しさをマツさんから教えてもらったように思います。

 例えば、洋服を買いに行っても、僕はまだ若手だったのでそんなにお金をもらっているわけではなかった。だからTシャツを1枚買うのでも、どうしようか悩んでいたんです。そうしたらマツさん、「そんな感じだからお前は試合に出れないんだよ。使えば入ってくるんだよ。自分を追い込めよ!」って。

 あの時は「本当にお金ないんだけどな」と思っていたけど、今思えば、自分にプレッシャーをかけて追い込むことで、努力して活躍できるようになる。そうやってプロとしてお金を稼ぐことができるんだよってことを教えてくれてたんだなあって。めちゃくちゃ厳しいやり方だけど、確かにそのほうが頑張れますよね。

 何より、マツさんの期待を裏切りたくなかった。そうやって僕のことを気にかけて、かわいがってくれるマツさんや竜二さんの期待に応えたい。その一心で、あの頃はボールを蹴っていたように思います。そう思わせるマツさんって、やっぱりすごい。

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