【月間表彰】鳥栖はなぜ失点が少ないのか 元日本代表が絶賛する、GK朴一圭の卓越したセービング力
スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は4月のJリーグの「月間ベストセーブ」にサガン鳥栖の朴一圭選手を選出。鳥栖は開幕から6試合連続で無失点を記録したが、その理由の一つとして朴選手のGKとしての基礎的なスキルの高さを挙げた。(取材・文=藤井雅彦)
4月のベストセーブは「レベルの高さを感じる鳥栖・朴一圭のシュートストップ」
スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は4月のJリーグの「月間ベストセーブ」にサガン鳥栖の朴一圭選手を選出。鳥栖は開幕から6試合連続で無失点を記録したが、その理由の一つとして朴選手のGKとしての基礎的なスキルの高さを挙げた。(取材・文=藤井雅彦)
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「彼は、攻撃も守備も楽しそうにプレーしますね」
楢﨑正剛氏はそう言って微笑んだ。
熟考の末に4月の「月間ベストセーブ」として選んだのは、第9節サガン鳥栖対横浜FC(3-0)の前半32分のワンプレーだ。鳥栖の1点リードで迎えた前半の半ば過ぎ、ボールを奪った横浜FCが攻撃をスピードアップさせる。ハーフウェイライン付近でボールを受けたMF小川慶治朗(横浜FC)はドリブルで持ち上がり、ペナルティーエリア外から右足を鋭く振り抜く。このシュートに反応したGK朴一圭は左手一本でセーブし、CKに逃れた。
ただのシュートストップにあらず。レベルの高さを感じさせた理由には、朴のプレースタイルが密接に関係していると楢﨑氏は説く。
「朴選手は攻撃に関わるプレーにも特徴があって、マイボール時はフィールドプレーヤーに近いポジショニングを取ります。ただし、この場面のようにボールを奪われた時は自陣ゴールに戻りながら守備をしなければいけません。ゴール前で構えている状態から前へ出るのは視野を確保できていて、身体の向きも作りやすい。反対に、高いポジションから戻りながら対応するのは距離感をつかみにくく、ボールから目線を切ることができないという難しさがあります」
このシーンに限らず、味方がボールを失った瞬間に朴が自陣ゴールへスプリントする光景は珍しくない。横浜F・マリノス時代には頭上を越されるロングシュートで失点した苦い経験もあり、鳥栖移籍後は攻撃から守備への切り替えが一段と早くなっている。
前述のシーンは、シューターの小川がフリーに近い状態で、しかもファーサイドではなくニアサイドへ若干ながらスライス気味の軌道を描いていた。バックステップを踏みながらのセービングは簡単ではなかったが、朴は左手を伸ばして難を逃れた。
「インステップで打たれたシュートなので、ファーサイドを狙われる想像はしやすい。でもこの場面のようにニアサイドを突かれると重心が反対になりがちで、戻りながらタイミングを合わせなければいけないのでとても難しい。それでも朴選手はしっかり反応し、難しいセービングではないかのように防ぎました。きっと本人は内心『ホッ』としたと思います」
GKならではの心理面も解説した楢﨑氏は、類似する場面として第18節鳥栖対ガンバ大阪(0-1)からもシュートセーブをピックアップした。前半11分、バイタルエリアでボールを受けたFW宇佐美貴史(G大阪)が地を這う強烈なシュートを放つ。前述した小川のシュートシーンと反対にファーサイドを狙われたボールに、朴は右手の指先でわずかに触れてゴールを許さなかった。
「最初のシーンと同じようなイメージで選びましたが、これはまだ前半の早い時間というのもポイントでした。このセーブで朴選手自身は恐らくノッたと思いますし、GKが主役になったというポジティブな感覚でプレーできます。ゲーム終盤に1点を争う展開でのビッグセーブは誰の目にも明らかな価値がありますが、まだ試合が動いていない序盤のワンプレーがその後の展開を大きく左右することもあると思います」