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最後のトップリーグ、4強を徹底分析 パナソニック、サントリーで順当か、それとも…

ラグビートップリーグ(TL)は4強が出揃った。新型コロナウィルス感染対策のための緊急事態宣言が延長される中で、無観客での開催が決まった準決勝2試合のカードはトヨタ自動車ヴェルブリッツ―パナソニックワイルドナイツ(15日)、サントリーサンゴリアス―クボタスピアーズ(16日、ともに大阪・花園)。準決勝からは第58回日本選手権を兼ねた戦いになるが、来年開幕する新リーグに移行するためTLは今季が最終シーズン。ファイナリストに勝ち上がるのはどのチームか。そして最後の王座を掴むのは誰か。4チームの戦いぶりと、チームデータを照らし合わせながら、覇権の行方を考える。(文=吉田宏)

パナソニックの選手たち【写真:荒川祐史】
パナソニックの選手たち【写真:荒川祐史】

15、16日にいよいよ準決勝…ベテラン吉田宏記者が展望

 ラグビートップリーグ(TL)は4強が出揃った。新型コロナウィルス感染対策のための緊急事態宣言が延長される中で、無観客での開催が決まった準決勝2試合のカードはトヨタ自動車ヴェルブリッツ―パナソニックワイルドナイツ(15日)、サントリーサンゴリアス―クボタスピアーズ(16日、ともに大阪・花園)。準決勝からは第58回日本選手権を兼ねた戦いになるが、来年開幕する新リーグに移行するためTLは今季が最終シーズン。ファイナリストに勝ち上がるのはどのチームか。そして最後の王座を掴むのは誰か。4チームの戦いぶりと、チームデータを照らし合わせながら、覇権の行方を考える。(文=吉田宏)

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 2003年にキックオフを迎えて18シーズン。国内最強リーグが最後のクライマックスを迎えている。

 残念ながらリコーブラックラムズが選手の新型コロナウィルス感染のために準々決勝辞退を余儀なくされたが、4強入りの顔ぶれは順当と考えていいだろう。

 好ゲームが期待される2試合だが、まずトヨタ―パナソニックから見てみよう。ここまで8勝1分けと無敗のパナソニックに、8勝1敗のトヨタが挑む図式だが、最大の注目ポイントはパナソニックの鉄壁の防御をトヨタが崩せるのかだろう。

 今季の4強チームのスタッツを見てみたい。

 上位4チームともなると数値は比較的近似値になるのだが、際立っているのはパナソニックの失点の少なさだ。前身の三洋電機時代から粘り強い防御で守り抜き、そこからボールを奪って一気に攻め込むのがお家芸。長らく協力関係を築いていたスーパーラグビー(SR)・クルセイダーズ(ニュージーランド)の最大の武器を取り入れ、クルセイダーズを5度のSRチャンピオンに導いた名将ロビー・ディーンズ監督が指揮を執り7シーズン目の今季、チームは完成形を見せようとしている。

 1試合平均の失点は11.1でリーグ最少。チームの過去のデータと比べても、6試合で中止となった昨季の14.7、一昨季の15.7からさらに低下している。キヤノンイーグルスとの準々決勝後にディーンズ監督に失点について聞くと、こう語っている。

「チームのディフェンスには非常に満足している。キヤノンの攻撃は本当に試練だった。以前対戦したときよりもはるかにチームとして成長していて、万全の状態でプレーオフに臨んできていた。それに対して我々も、勝つのが簡単ではないプレーオフという試合で、きょう本当にしっかりと仕事ができたと思う」

 キヤノン戦前までの1試合平均失点は10.5。キヤノンに奪われた17点は、チームにとっては今季2番目の“ワースト失点“だが、準々決勝というステージ、シーズン中で着実に攻撃力を高めてきたキヤノン相手では、むしろ評価するべき数字だったと考えていい。実はタックル成功率やラック獲得率では昨季までと大きな差はないのだが、この進化には、1試合平均の反則数が6.7という驚異的な少なさが影響を与えているはずだ。

 このようなリーグ屈指の防御力を誇る相手に、トヨタがどうハンドルを切っていくのかが1つのポイントになる。アタックでの選手個々のポテンシャルは申し分ない。来日4シーズン目で、すでに日本ラグビーの特徴も選手の弱みも知り尽くしているSOライオネル・クロニエがゲームを組み立て、CTBロブ・トンプソン、試合を重ねるごとにスキルの高さを輝かせ始めたチャーリー・ローレンスらが仕掛けると、大外にはWTB高橋汰地、ヘンリー・ジェイミー、FBウィリー・ルルーの決定力抜群のランナーが並んでいる。トヨタが誇る攻撃陣が、どこまで持ち味を発揮できるかが焦点になる。

 判断材料になるのは、準々決勝のパナソニック-キヤノンだ。キヤノンも南アフリカ代表CTBジェシー・クリエルはじめトヨタに負けず攻撃力の高い選手がBKラインに並んでいたが、ブレークダウンでの苦戦が目立った。パナソニックにターンオーバーを8回許しているが、そのうち5回は3-20と大きく引き離された前半に起きている。パナソニックのFL布巻峻介のボールに絡むプレーが目立ったが、この“ジャッカル職人”は「毎試合毎試合ジャッカルの機会があれば僕だけでなく全員しっかりと入れるようになっている。それでいい結果がでていると思う」と、チーム全体でのブレークダウンスキルの進化を指摘。しかも、攻撃をテンポアップさせないためのしぶといブレークダウンでのボールへの絡みなど、ターンオーバーのようには数値化されないプレーが、キヤノンを2トライに封じ込めることにつながっている。

 防御にスポットを当ててきたが、パナソニックの場合は防御と攻撃が直結しているのが特徴。先にも触れたようにボールを奪って一気にトライに持ち込むスタイルが持ち味だからだが、キヤノン戦前半の2トライのように、ラインアウトからのスコアが多いのも特徴的だ。スタッツでのボールキャリー、パス回数が少ないにも関わらず、カンファレンス戦の総得点、トライ数では16チーム中2位だったのは、少ない攻撃回数でトライまで持ち込んでいる特徴を示している。

 キヤノンの敗戦からわかるように、トヨタがどこまでボールを奪われず、なおかつ自分たちのテンポで攻撃を継続できるかに注目したい。ボールキャリーがパナソニックのタックラーにどこまで強いヒットでコンタクト出来るか、そして2人目、3人目の寄りの早さ、正確さが重要になるだろう。ニュージーランド代表NO8キアラン・リード、オーストラリア代表FLマイケル・フーパーのレジェンドコンビの活躍が欠かせない。そして、勝利のためには、スタッツでも明らかなように、どこまで課題の失点を減らすことが出来るかも重要になるだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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