バドミントン世界1位ペアの「パートナー論」 解散と再結成を経て強くなった2人の関係
福島が挙げた忘れられない言葉「先輩じゃないとダメ」
廣田はあまり感情を表に出さないポーカーフェイス。福島は表情から気持ちを想像するのが「なかなか難しい」と笑いつつ、「雰囲気でなんとなくわかります」と長年一緒にいることで察しているという。
一方、福島が挙げた言葉は「福島先輩じゃないとダメ」だ。なんとも愛を感じるフレーズが生まれたのもペア再結成後。意見を言うようになった後輩に言われた。「ふとした言葉だったかもしれないです」。これも遠征中に2人部屋に泊まっていた時だった。
「廣田は口下手なので、こういうことをあまり言わないですね。正直びっくりしたというか、『あっ、そういうふうに思ってくれていたんだ』という嬉しさはありました。言われた自分は『あっ、おっ、おっ……』みたいな感じでオドオドして(笑)。自分も廣田じゃないと無理だと思っていたので、言葉にしてくれたことが嬉しかったですね」
“告白”について、廣田は「いや、覚えてない(笑)」とポツリ。「覚えてないというか、いつも思っていることではありますね」と率直な胸の内を明かした。相手の意見を「聞いてみよう」という意識を持ち始めた福島と、「自分はこうしたい」と伝えるようになった廣田。今でも2人だけで話す時間を大切にしているという。
最強ペアに挙げてもらったパートナーからの忘れられない言葉。共通するのは“相手に自信を持たせる”という部分だ。信頼があるからこそ、率直に想いをさらけ出せる。さらけ出したからこそ、信頼が厚くなる。時間、空間を共有し、フクヒロは結びつきを強くしていった。
目標を問われると、ともに「東京五輪で金メダル」と迷いなく答える。互いに尊重し、共通目標を大切にしているからこそ、一つになれるのだろう。ダブルスを組む若い選手へ、ペアを代表し、福島からパートナーに対する声掛けのアドバイスをもらった。
「ダブルスは1人でやるものではない。2人が一つになった結果強くなる、力を発揮できるものだと思っています。パートナーがミスをしたら、ムカついたり、自分も落ち込んだりするけど、片方だけがずっとミスをしているわけではない。そういう時、どう声掛けをしたらパートナーがどう復活するのか、気持ちが上がるのか。『フン!』ってするのではなく、寄り添ってあげることが大切です。互いに寄り添うような関係性になれれば絶対に強い。そこは2人で心掛けてほしいなと思います」
フクヒロが世界一に君臨する理由がここにある。
(取材は2月末)
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)