「頭を使え、死ね」 元陸上選手が闘った「アスリートとSNSの誹謗中傷」問題の現実
「スプリントコーチ」というジャンルを築き、サッカー日本代表選手、プロ野球選手など多くのトップアスリートに、理論に基づいた確かな走りを提供する秋本真吾さん。その指導メソッドがスポーツ界で注目を浴びている一方で、最近はフォロワー2万人を数えるツイッターのほか「note」を使って自身の価値観を発信。「夢は叶いません」「陸上の走り方は怪我をする」「強豪校に行けば強くなれるのか?」など強いメッセージを届けている
連載「スプリントコーチ・秋本真吾の本音note」、今回は「アスリートとSNSの誹謗中傷」
「スプリントコーチ」というジャンルを築き、サッカー日本代表選手、プロ野球選手など多くのトップアスリートに、理論に基づいた確かな走りを提供する秋本真吾さん。その指導メソッドがスポーツ界で注目を浴びている一方で、最近はフォロワー2万人を数えるツイッターのほか「note」を使って自身の価値観を発信。「夢は叶いません」「陸上の走り方は怪我をする」「強豪校に行けば強くなれるのか?」など強いメッセージを届けている。
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そんな秋本さんが「THE ANSWER」で独自の価値観を発信する連載、今回のテーマは「アスリートとSNSの誹謗中傷」。現役時代は400メートルハードルの選手としてオリンピック強化指定選手にも選出。特殊種目200メートルハードルのアジア最高記録などの実績を残し、引退後はスプリントコーチとして活躍する秋本さん。しかし、かつてSNSでは誹謗中傷に悩まされ、殺害予告を受けたこともあった。自身の経験から現役選手に助言を届ける。
(聞き手=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
◇ ◇ ◇
――今回は近年、誹謗中傷などの問題も起こっている「アスリートとSNS」の関係について考えていきたいと思います。まず、スポーツ界では当たり前のように選手が個人のツイッター、インスタグラムを持ち、発信する時代になりましたね。
「その流れは感じます。なかでも、スポーツ選手がSNSを使う目的は2つあると思っています。1つ目は選手同士またはファンとのコミュニケーションを図ったり、純粋に自分の発信をしたりするもの。世間の動向を見るためという意味合いもあります。それは裏アカウントを使えばいいと思いますが、本アカウントでやるというのは選手、世間とつながる目的が大きい。2つ目はフォロー0人で『自分はこんなアスリートです』と、ただ自分の思想を発信するもの。後者は少なく、基本的に前者だと思います。そして、批判の声がキツくなりやすい可能性があるのが前者の人たちと感じています」
――秋本さんはSNSを活用した発信は早くからやっていたそうですね。
「現役時代、大学院に進学した2005年に自分でホームページを作ったんです。自分の活動を写真に撮ってブログっぽく見せて、仲間内でコミュニケーションを取る場として活用していました。陸上選手の中ではそういう動きはわりと早い方で、自分の近いコミュニティでは結構見られていました。ただ、見る人は身内が多かったですし『叩く』『批判する』という文化がまだない時代。箱根駅伝を走るようなランナーだったら違ったかもしれませんが、自分は超有名人ということもなく、それほど知られていなかったので、わりと平和に使っていました」
――ただ、引退してスプリントコーチに転身した後、ツイッターで誹謗中傷を受けた経験があるそうですね。どのような経緯だったんですか?
「スプリントコーチを始め、スポーツ選手に走り方を教えることによって少しずつメディアに取り上げていただける機会が増え、それと同時にアンチが増え始めたんです。フォローされるとツイッターから通知が来るのですが、アイコンの画像なし、フォロー1、フォロワー0、それでアカウント名に自分への中傷する言葉を書いたアカウントに毎日フォローされるようになり、その数も増えて行きました。
同じ人がアカウントを作ってやっていたと思いますが、1日50件くらいになりました。そういう形でどんどん誹謗中傷が届くようになり、メンタル的にキツくなってしまいました。夜寝る前にツイートを非公開にして寝て起きて解除したり、中傷してくるアカウントを毎回毎回ブロックしたり、対策はしていたのですが、それが止まらなくなり、どうしようかと悩みました」
――実際に、どんなメッセージを受けていたのでしょうか。
「今、ツイッターを見れば分かります。(確認後)360以上ありました……(笑)。内容は『死んどけ』『頭を使え、死ね』『自分の中で生きてろ』『相変わらずどこまでも頭が悪い』『お前ほどの自己中心は世の中にいない』『今日からまた殺してやろう』『諦めろ』『給料に見合った指導してんのか』『お前は指導といって現場で参加するだけ』『俺がお前を指導してやろう』とか、殺害予告もあります。ヤバイですね、これ」