新谷仁美は己に厳しすぎる “超結果主義者”の背景にある「自分は商品」という思考
「人は生きる上で対価をもらう。どんな手段でも返さないと」
当たり障りのないコメントをするアスリートもいる中、しっかりと言葉に自分の思いを込める。会見で発した「ミスは一切許されない」という強いワード。何がそこまで覚悟を持たせる要因になったのか。報道陣から飛んだ思考に迫る質問に、新谷の“アスリート論”が垣間見えた。
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「あくまでも個人的な考えですが、人は生きる上で対価をいただいていると思っています。対価をいただいているということは、それだけの責任を持って、どんな手段をとっても結果で返さないといけない。アスリートは凄い力を持っていると思われているからこそ、パフォーマンスを見せないと存在価値はない。
そういったところから私は100かゼロかしか考えていないです。結果で100といえば、レースで1位になるしかない。私は常々100を出すようにしています。『自分は商品』と思っているからこそ、それが当たり前だと認識して日々を過ごしています」
今や所属先、指導者、スポンサー、トレーナー、栄養士、施設、用具関係など、トップアスリートになればなるほど多くのサポートを受ける。もちろんファンの応援もその一つ。そんな多くの“対価”を受け、アスリートとして返していくことが、新谷の結果を求める理由だ。そして「あくまで個人的な考え」と他の選手に押しつけることはしない。
そんな本気の新谷には本気の人が集まった。今季、好記録を連発した背景について「強い味方ができたことが一番の要因」と栄養士らスタッフに感謝。練習メニューは12年ロンドン五輪男子800メートル代表の横田真人コーチに任せた。「結果が出なかったらコーチの責任」と冗談交じりに語るが、ちょっとした心のゆとりにも繋がった。信頼できるのは「いつも選手目線。口だけじゃないのが一番の魅力」と同じ結果を求める人だからだ。
向かうは東京五輪。強くなるために一番必要なことを問われると、「もう32歳になったので、泣かないようスタートに立てたらいいな」と笑う。そしてロンドン五輪以来2度目の五輪へ、言葉を燃え上がらせるように気持ちを込めた。
「世界は29分台前半。30分20秒の私より300メートル、下手したら1周差をつけられるくらい前にいる。現実的に考えたら日本人には無理だと思われがち。特にトラックの長距離はアフリカ勢の強さが際立っているので、私はどうしてもギャフンと言わせたい。日本人でもやれることを証明したい」
32歳のカムバックは終わっていない。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)