「NBAに最も近い日本人」の現在地 八村塁、現役NBA選手が見た“未来予想図”とは?
NBAで不可欠な要素とは…「厳しいシーズンで安定して力を出すことが最大の課題」
一方、NBAを目指す上で、八村の課題となるのはどんな部分か。コート上での会話を問題なくこなす英語力とともに、コリンズは「ハードスケジュールの中でも力を発揮する安定感」を挙げた。
「カレッジでももちろん安定したプレーは必要だけど、試合数はNBAの半分にも満たない。特にゴンザガ大は試合が行われるペースは一定で、いつゲームがあるか、いつ練習できるかを理解し、身体を慣らしていくことができる。NBAでは練習時間が少なくなるので、それに対する適応も重要。より長く、厳しいシーズンで安定して力を出すことが僕にとって最大の課題だ。ルイにとってもそれは同じことになるだろう」
実際にNCAAのシーズンが40戦以下なのに対し、NBAは82試合という長期戦だ。連戦も珍しくはなく、1年を乗り切るための負担は並大抵ではない。まだ身体が完全にはできていないルーキーにとって、スケジュールへの適応は“最初の関門”のようなものだ。八村に関しても、プレー時間の増えた今季から、まずはNBAよりはるかに日程の緩やかなNCAAで、シーズンを通じて安定して力を出せる術を学んでおくに越したことはない。
現在の八村はまだ荒削りだけに、道のりは長いようにも見える。それでも将来のNBA入りを前提のように話すコリンズの言葉を聞いても、潜在能力への注目度は明らかだ。ゴンザガ大で先発に定着することなくNBA入りしたコリンズ同様、控えの立場でもアピールはできる。来年、あるいは再来年6月のNBAドラフトに向けて、八村が準備を整えていくことを期待したい。
◇杉浦大介
1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)
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杉浦大介●文 text by Daisuke Sugiura