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「好きと思えるうちは辞めないで」 中野友加里が考える「女子選手の競技寿命」問題

体重問題は「体をダイエットから休ませてあげる」意識も大切、SNSとの距離感は…

――フィギュアスケートは30メートル×60メートルの広いリンクで1人の演技を時には1万人以上のファンが観戦する競技。注目を力にすることが難しい選手たちもいると思いますが、選手としてはどんなメンタルを持つべきでしょうか。

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「やっぱり話題にしていただいているうちが良い環境ですし、スケーターとして上り調子で向上するためには良い環境だと思います。そう考えることで、技術面も磨かれていくのではないか。私が辞めることになった一つのきっかけは、人に良い演技をお見せすることができない、自分史上最高のパフォーマンスができないと思ったこと。良い状態で良い演技を見せたいというのが選手の想い。これはもう見せられないという時が来たら競技人生を考えないといけませんが、そうなるまでは氷上に乗ったら、俳優になり、女優になり、演技をしければいけない。いつも『私を見て』という状態でスケーターにはいてほしいです」

――競技で受けるプレッシャーは、技術はもちろん精神の負担ともなります。特に、フィギュアスケートの女子選手は10代に体型変化の時期と重なり、体重管理がセンシティブな問題として直面します。

「女子選手は悩むと思います。特にオフシーズンは注意が必要です。今回はコロナの影響がどう出るか分かりませんが、運動不足になる選手もいたのでは。体力を戻すまでに時間かかりますし、体重が増えると、力はつくかもしれませんが、フリーの4分間を滑り切るまでのパワーが、重くなった分だけ消耗する。一番影響が出るのはジャンプ。500グラム増えたら、500ミリリットルのペットボトルを持って跳んでいるのと一緒。その太った分だけジャンプの軸がずれます。

 すごく厳しいコントロールを求められるし、これはフィギュアスケートを辞めるまでの付き合い。私もスケートを辞める最後の最後まで体重と戦いました。今も体重を気にする生活が続いているので、簡単に解決する問題ではないと思っています。現実的には、競技を辞めてから気にしなくなればいいと思って、うまく付き合っていくしかありません。なかには体重コントロールをしなくても、体型維持できている人もいますが、多くの人がぶつかっている問題だと思います」

――フィギュアスケート選手に限らず、心理的なストレスがかかると大抵は食が細くなるか、逆に食べ過ぎてしまうか。2つに分かれそうです。

「私はだいたい後者でした……(笑)。海外まで体重計を持って行って計っていましたが、海外は日本にないものを食べられるので、増えて帰ってくることが多かったです。特にイタリアは美味しいものが多くて……。ただ、試合後のことなので増えてしまったことはなるべく気にしないようにしていました」

――どこかで線を引いて、割り切ることが大切ということですね。

「大会のフリーまでは我慢して『フリーが終わったら食べてもよし』みたいに自分のルールを作ってしました。ずーっとダイエットなんて続かないもの。フリーが終わって、自分の気分が落ち着いたら、好きなものを好きなだけ食べる、という環境を作ってあげていました。結果が良くても悪くても、頑張った自分を褒めてあげる感覚で『体をダイエットから休ませてあげる』という考えも大切だと思います。どこかで体型に関するストレスを軽減しないと参ってしまうので、私は試合後よく食べていましたが、その分、体重を戻すのも大変でした。

 ここまでと決めて、なんとか頑張って、そこから少し気を抜いて……とリフレッシュさせながらやっていく。そんな風にしているうちに、自分のベストの体重も分かりますし、『これだけ食べたら増える』『これだけ練習したら痩せる』ということもだいたい分かるようになります。それに合わせて、大会にピークを持っていくコントロールも掴めるようになるもの。私の場合は20歳くらいの時でした。大学で上京して始めて一人暮らしを始めて、自炊をするようになり、1年以上やってみて掴んだ感覚がありました」

――メンタル面のコントロールにおいては、最近の選手はSNSも発達し、情報との付き合い方が難しい時代でもあります。

「私の現役時代はちょうど『2ちゃんねる』が流行り始めた時期でした。今で言うエゴサーチとまではいかないですが、時々覗いている選手もいました。それがプラスに働く必要があるとは思わなくて、そういう声に触れた結果、自分の気分が落ち着くのであれば見ていいと思います。今はSNSが盛んになったので、良い意見も悪い意見も吸収し、前向きに捉える力があるのであれば見ていいと思いますし、マイナスなことを書いている人がいるからどうしよう……と影響が出るなら見ない方がいいと思います」

――軸を持って、自分の意思で決断すること。これはSNSとの付き合い方に限らず、選手として成長する上で必要なことですね。

「その通りだと思います。なので、SNSに関しても、それで気分が落ち着く人はきっといると思います。自分のことを世間がどう思っているかを知って見つめる上で必要ならいいと思います。それがズバリ合っているかもしれないし、自分も納得するなら直していけばいい。見るも見ないも自分次第かなと思います」

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中野 友加里

THE ANSWERスペシャリスト フィギュアスケート解説者

1985年8月25日生まれ。愛知県出身。3歳からスケートを始める。現役時代は女子史上3人目の3回転アクセル成功。スピンを得意として国際的に高い評価を受け、「世界一のドーナツスピン」とも言われた。05年NHK杯優勝、GPファイナル3位、08年世界選手権4位など国際舞台でも活躍。全日本選手権は表彰台を3度経験。10年に現役引退後、フジテレビに入社。スポーツ番組のディレクターとして数々の競技を取材し、19年3月に退社。現在は講演活動を行うほか、審判員としても活動。15年に一般男性と結婚し、2児の母。YouTubeチャンネル「フィギュアスケーター中野友加里チャンネル」も人気を集めている。

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