スケート教室に「入会1年待ち」 中野友加里が訴える“待機選手問題”のリアル
入会に「1年待ち」の教室も…その間に「辞めていく子供もいるのが現実」
――そう考えると、子供たちの教室の運営も簡単ではありません。
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「今のスクールは私が知っている限りでは一般の方に開放されている時間で、リンクの4分の1くらいのエリアを仕切り、3、4人の先生がいて1クラス20人くらいでやっているのが一般的。ただ、入会に1年待つと聞いたこともあります。待機の間に一般のリンクで自分なりに練習して上手くなる子供もいるし、上手に滑れなくて辞めていく子供もいるというのが現実としてあります。私は一般滑走で遊びながら滑り、教室には入らず、クラブに入りました」
――中野さんは審判員として地方の大会で子供たちの大会を担当されていますが、審判員として感じることはありますか?
「大会に参加している子供自体は増えているのですが、大会に参加するためには正式にクラブに入会する必要があります。バッジテストと呼ばれる試験で級を取得しないといけません。初級から8級までありますが、大会には初級を取らなければ出られず、クラブもバッジテストで初級を取らないと現在は入れません。自由に『今日受けます』と言って受験できるものではないので、競技をするにはクラブの入会が一つの条件になります」
――日本全体の競技力で見ると、近年は「西高東低」が言われ、大阪、愛知から有力選手が次々と育っています。中野さんも愛知出身ですが、ご自身が経験した競技環境はどうでしょうか?
「私自身もリンクの環境自体は整ったものではありませんでした。小さい頃はフィギュアスケーターが優先されるわけではなく、アイスホッケー、フィギュアスケート、スピードスケート、ショートトラックの練習にスケート教室と一般のお客さん。みんな、一緒に練習する状態。氷を綺麗にする整氷もそんなに入ってくれるわけではなく、大人数が滑るとあっという間に状態が悪くなってしまいます。そうすると滑りも悪くなるし、ジャンプも跳びにくかったり、スピンが回らなかったり、という問題が出てきます。
かといって、フィギュアスケートが優遇されているわけではないので『整氷してください』とは簡単に言えません。しかし、あまり綺麗ではない氷の状態で上達していったので、愛知出身の選手は与えられた環境で最大限にやらなければいけないという力が身につき、みんな強くなれた一つの要因かもしれません。海外に行っても、地方に行っても、どこでも同じようにやらないといけない。与えられた状況、限られた時間と場所でやれることをやるという意識につながっていったと思います」
――現役時代、国際大会に数多く出場し、振付では米国へ行かれている時代もありました。現地の環境はやはり日本とは違いましたか?
「私が米国で使用していた施設は、一つの施設に3つのリンクがあるんです。例えば、A、B、Cとするなら、Cリンクはスケート教室に使う子供専用の小さいリンク。Bリンクはアイスホッケーのサイズだけど、アイスホッケーもフィギュアスケートも使う。Aリンクはフィギュアスケート専用の30×60メートルのサイズ。トップの選手は『Aリンクが終わり、Bリンクが空いたら移動……』という感じで効率的に朝から晩まで使っていました。
私も同じようにAとBのリンクを歩いて移動して練習しました。そこで見ているコーチもAリンクでトップのクラスの選手を見ていましたが、もう1つ下のカテゴリーの選手を見るためにBリンクに移動する。一般の営業は土日のみで、平日は競技者のためだけにある状態。土日は多くのお客さんで賑わっていた記憶があります。多くのスケーターを作るためにそれだけの環境を作れるのは凄いと感じていましたし、そういう効率的なシステムは米国ならではだと思っていました」
――それだけの環境があると、日本に来る海外選手がギャップに驚くこともあるのでしょうか?
「『狭い』とよく言っていましたね……(笑)。彼らからすると、びっくりするのは施設全体の小ささ。特にバックヤードの部分。更衣室一つとってもキツキツで、そういった見えないところに驚かれました」