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サントリー、港区にホームスタジアム構想 本気度を裏付けるトップからの“お墨付き”

サントリーの土田雅人執行役員(左)と港区の武井雅昭区長【写真:吉田宏】
サントリーの土田雅人執行役員(左)と港区の武井雅昭区長【写真:吉田宏】

土田雅人執行役員が明かした、佐治会長の一言とは

 都心の密集エリアで、地価も高い港区にスタジアムを作るのは荒唐無稽ともいえる。しかも、秩父宮ラグビー場以外に、同区内にトップレベルのラグビーの公式戦を行える規模の施設はない。にもかかわらず、この構想に現実味を持たせるのはサントリートップの発言だ。

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 土田氏は質疑応答の中で、「秩父宮ラグビー場はもちろんですが、東京都が持っている味の素スタジアムや駒沢競技場、こういった所を中心にいきますが、いずれは我々もホームスタジアムなのか、港区さんが持っているものなのか、そういった所が出来るかなということで、今回提携させていただいた」とホストスタジアムへの思いを述べるのと同時に、「ウチ(サンゴリアス)の大の応援者であるサントリーの佐治(信忠)会長が『やはり、中心でやれ』ということで。府中にはグラウンドはありますが、サントリーらしく(企業拠点のある)港区でやったらどうだというのがオーナーの一言です」と明かしている。

 経済誌フォーブスの2020年日本長者番付で4位という日本を代表する実業家の佐治会長は、日本のビジネス界で一目置かれる存在で、社内でも絶大な影響力を持つ。熱心なラグビーファンで、社訓のように位置付けられる「やってみなはれ」というモットーで、選手や社員にも挑戦する姿勢、意欲を求めてきた。そのトップからの“お墨付き”の構想となれば、チームやサントリー本社でも、容易に断念はできない案件になる。まさに「やってみなはれ」の思いで、新スタジアム構想を推進することになりそうだ。

 現在TLに参戦する16チームの中で、サントリー、東芝、リコー、キヤノン、日野の5チームが東京に拠点を置く。ホストタウンこそ、それぞれのグラウンド所在地になる見通しだが、ホストスタジアムとなると使用できる競技場は限定的だ。サントリーと協定を結んだ港区には日本ラグビーの聖地・秩父宮ラグビー場があるが、所有者は日本スポーツ振興センター(JSC)であり、ラグビー協会、新リーグ準備室でも、同ラグビー場については参画チームが均等に試合を開催できる会場と位置づけている。東京を拠点とするチームにとっては、ホストスタジアム確保は重要かつ深刻な問題でもある。スタジアム争奪戦にもなり兼ねない状況の中で、サンゴリアスがいち早くオーナーからの“勅令”を受けたことになる。

 多くの新リーグ参入チームが、チーム運営やホストスタジアム問題などでまだ足踏み段階の中で、7月にはサントリーのライバルでもあるパナソニックワイルドナイツが、熊谷ラグビー場に隣接する地域にクラブハウス、練習グラウンドを建設することを発表。先陣を切って新たなチーム構想を打ち出した形になったが、サントリーもライバルとは異なるアプローチで、新たなチームの在り方を示したのが今回の協定だ。日本の中心地と言っても過言ではない好立地の港区に、秩父宮とは別の拠点が誕生すれば、サンゴリアスやサントリーのみならず、ラグビー界への恩恵は計り知れない。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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