佐藤琢磨はなぜ勝てたのか 仲間でラーメンをすすった日、チームは1つになった
ラーメンで決起集会「思いを共有するために…」
それにしても、緻密な戦略と理想的な走りを可能にする速いマシンを作り上げたエンジニア、6度のピットストップを完璧な作業で送り出したピットクルーらチームの結束は見事だった。「奇跡のような状態」を作り出した背景に、佐藤主催の決起集会があった。佐藤はレース前、人数を絞って、自身の30号車のスタッフとその家族との食事会を開催していた。
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「みんなで楽しく日本食、ラーメンなんですけど(笑)」。新型コロナウイルス感染リスクを抱えながら、レースに参戦しているチームスタッフにとって、日々の不安を忘れられるひとときとなったに違いない。「レースで頑張っていこうという思いを共有するための食事会だった。それが決勝に爆発して、みんなのすごい集中力が生まれて今回の勝利につながった」。
常々、佐藤琢磨というドライバーには求心力があるように感じていた。それは周囲のスタッフと会話をすれば、すぐに分かる。長年米国でのマネジャーとして佐藤を支えるフューセク氏は以前、「彼ほどメカニックと多くの時間を過ごすドライバーを見たことがない。レーサーはバックシートにスポンサーやチームオーナー、スタッフら多くの人の思いを乗せて走る。琢磨はそれをよく理解している。だからこそ周囲への気配りを忘れないのだが、あそこまでできる人はなかなかいない」と感心していた。
佐藤も「ドライバーができることというのは実は少ない。チームの方針そのものは動かせないけど、結束力がついてくるかというのはどんなドライバーがいるかによって変わってくる」と自らの役割を語っていた。今回のラーメン決起集会も、今季思うような結果が残せていなかったチームの雰囲気を感じ取ってのことだったのだろう。