ラグビー日本代表「具くん」の父 元韓国代表PRがHondaのコーチに必要なワケ
トップリーグ(TL)に世界クラスのレジェンド選手の入団ラッシュが続く中で、Honda HEAT(ホンダ・ヒート)は異色の新加入を発表した。昨秋のワールドカップ(W杯)日本大会でもスクラムのキーマンとして活躍した韓国出身のPR具智元の父・東春さんのスクラムコーチ就任だ。ホンダOBでもある元韓国代表PRのコーチとしての手腕には未知数の部分もある一方で、ホンダという若いチームに新しい強みをもたらす可能性を秘めている。
記者歴25年、吉田宏氏のラグビーコラム
トップリーグ(TL)に世界クラスのレジェンド選手の入団ラッシュが続く中で、Honda HEAT(ホンダ・ヒート)は異色の新加入を発表した。昨秋のワールドカップ(W杯)日本大会でもスクラムのキーマンとして活躍した韓国出身のPR具智元の父・東春さんのスクラムコーチ就任だ。ホンダOBでもある元韓国代表PRのコーチとしての手腕には未知数の部分もある一方で、ホンダという若いチームに新しい強みをもたらす可能性を秘めている。
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コロナ禍の中で多くのTLチームが世界クラスの選手の獲得合戦を繰り広げているのは、このコラムでも以前に触れたが、8月を迎えてもスター選手の契約書が積み上げられる。7月31日には、オールブラックスで抜群の決定力をみせてきたFBベン・スミス、2011年W杯優勝メンバーのSOアーロン・クルーデンの神戸製鋼コベルコスティーラーズ入団が発表された。同日にはホンダも南アフリカ代表LOフランコ・モスタートらの獲得を発表したが、その新加入リストで興味深かったのは、南アフリカの世界一メンバーではなく選手の後に書かれていた名前だった。
具東春 スクラムコーチ――。
ラグビーファンなら、この姓とチーム名でご察しだろう。そう、昨秋のW杯でも日本代表のPRとして大活躍した具智元の父親だ。
東春さんは韓国代表PRとして10シーズン以上活躍し、同時にホンダの前身である本田技研鈴鹿ラグビー部のメンバーとして日本でもスクラムの強さを発揮してきた。引退後は韓国に帰国して事業を行ってきたが、長男・智允(CTB)、次男の智元を日本に留学させ、自身がOBでもあるホンダ入団を後押しした。そして、今度は東春さん自身が息子たちと同じピッチに立つことになる。
東春さんは、息子たちの応援のために昨季までも頻繁に来日して、ホンダの後輩たちの練習に顔を出すこともあった。韓国での仕事も一区切りがついたことで、コーチに専念することを決意したという。コーチ就任にあたり、チームを通じてこのようなコメントも発表している。
「選手時代も在籍したHondaラグビー部に再びコーチとして携わることができて嬉しく思います。自分の今までの経験を基に、FW全員と協力してチームの武器となるHondaスクラムを完成させられるよう頑張ります」
一般論なら、首をかしげる読者もいるかも知れない。韓国は8月1日時点のワールドランキングで31位と、日本の9位とは大きな差がある。昨秋のW杯で8強入りを遂げた国の強豪チームに、まだW杯出場すらない国の元代表選手がコーチとして必要なのだろうか。
この疑問を、ホンダ関係者にぶつけてみると、スクラムという特殊なポジションだからこその期待を語ってくれた。