他に先駆け公式戦の再開決定 「スポーツが必要か?」に日本ラクロス協会が出した答え
日本ラクロス協会は6月30日、「2020年基本方針」と「活動再開ガイドライン」を示し、今季の公式戦再開決定を発表した。スポーツ界、特にアマチュアスポーツ界の中ではいち早い方針決定となったが、なぜ迅速に方針を打ち立てることができたのか。また、決定に至るまで、どのような議論が重ねられたのか――。
協会理事・安西渉氏に聞く、発表までの舞台裏「ゼロリスクを求めない」
日本ラクロス協会は6月30日、「2020年基本方針」と「活動再開ガイドライン」を示し、今季の公式戦再開決定を発表した。スポーツ界、特にアマチュアスポーツ界の中ではいち早い方針決定となったが、なぜ迅速に方針を打ち立てることができたのか。また、決定に至るまで、どのような議論が重ねられたのか――。
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日本では比較的歴史の浅いラクロスというスポーツが持つフットワークの軽さ、そして協会が常に心掛けている自主性・主体性に、その答えのヒントがあるようだ。協会理事の一人でCSO(最高戦略責任者)の安西渉氏に、話を聞いた。
世界で感染拡大する新型コロナウイルスは、スポーツ界に大きな影響を与えている。人々の命が脅かされ、日常生活に制約がかかる中、スポーツ、音楽、芸術などは不要不急のものとして活動“自粛”。緊急事態宣言が解除された今も再開の目処が立たないものも多い。
こういった状況下でも、いち早く主体的な方針決定を行ってきたのが日本ラクロス協会だ。2月27日には活動自粛を発表し、その直後から再開に向けての議論を重ねてきた。
「ずっとコロナとどう向き合うか話し合ってきましたが、その根底にはラクロス協会のアイデンティティについての話もありました。こういう状況での対応は、世の中の動きを見ながら他のスポーツ協会の決定に足並みを揃えるのか、あるいは自分たちで方針を決めてくのか。まずは、自分たちで決めていこう、ということを決めました」
再開に向けての議論では、あらゆる角度の比較検討を行った。「意思決定をする上で、何を天秤に乗せるかという話。リスクだったり、コストだったり、再開して得られるもの、再開せずに失われるもの。コロナの具体的なリスクについて、専門家の話を聞いて理解に努めました」という。医師やスポーツ療法士、大学研究者からなる医科学委員会や、米ペンシルバニア大学の免疫学教授から寄せられる専門的かつ客観的な情報を元に、再開のメリットデメリットを一つ一つ検討。その結果、たどり着いたのが「ゼロリスクを求めない」という指針だった。
「生きていれば他の病気に罹ることもあるし、交通事故に遭うこともある。どんなことをしてもリスクはあるので、新型コロナウイルスに対してもゼロリスクを求めるのは不可能だという結論になりました」