選手とファンの関係と「待機選手問題」 中野友加里が考えるフィギュアスケートの価値
競技人口が増える一方で感じる課題「“待機選手”の存在があるんです」
競技人口が増えるフィギュアスケートの未来に向け、課題もある。
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引退後はフジテレビでスポーツ記者として、様々な競技を取材してきた中野さん。昨年3月に退社後は解説者のほか、ジャッジとしても活動し、複数の角度からスケート界を見つめている。今、問題に感じているのが、ジュニア世代の“待機問題”という。
「今、保育園の待機児童みたいに、“待機選手”の存在があるんです。スケート教室にも入れない、スケートクラブにも入れない。羽生結弦選手に憧れ、スケートを始める子供もたくさん増えたのですが、一方でスケートリンクが足りない状況にあります。結果、入会できるクラブの人数も制限され、待機している子供たちがいる現実があります。
そういう子たちを解消するために減りつつあるスケートリンクを維持していく、もしくは増やしていくしかない。場所も維持費も大変なことは承知の上ですが、一つの大きな課題。スケート人口が増えることがいいことには間違いないので、是非、たくさんの子たちがスケートクラブの一人になって、私はジャッジとして多くの子を採点したいです」
競技がより普及、発展していくためには、冒頭の「見る魅力」だけじゃなく「やる魅力」が広がっていく必要がある。特に、小さい子供たちがフィギュアスケートをすると、どんな人格的な成長が得られ、その後の人生を豊かにするのかは、大切な価値だ。
中野さんは「気持ちが強くなること」に加え、「継続する力が身につくこと」を挙げた。
「フィギュアスケートは一つ一つの技術を習得する要素が多く、時間がかかる競技。スケート靴を履いたら、すぐに滑れるようになるわけではない。ボールを投げる動作は何度か繰り返すうちに、なんとなく上達できるかもしれませんが、氷の上という不自由な場所で競技をするから、綺麗に動作をこなせるようになるまでは継続が必要になる。なおかつ、毎日積み重ねて努力をしないとトップ選手になれない。『継続は力なり』を教えてくれるのがフィギュアスケートだと思うし、その価値が広まってほしいです」
長い歴史において、全盛ともいえる人気を見せている日本のフィギュアスケート界。中野さんは自分を育ててくれた競技に対する恩返しの気持ちとともに、今を過ごしている。全国のリンクで広がる風景がより輝き、明るい未来につながることを願って。
(17日掲載の第3回は「中野友加里が語る、羽生結弦の凄み」)
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)