【今、伝えたいこと】 千葉真子の「ベストスマイル」ができるまで 思い出す小出監督の「せっかくだから」
コロナ禍で見つけてほしい“ワクワク道しるべ”
他者との関りが希薄となる今、大切なのは「孤独にならないこと」だと感じている。自身のランニングクラブでもオンラインで練習会、質問タイムを設けるなど会員と楽しいひと時を提供。「1人っきりだと何もできない。周りの人たちと支え合いながらというところは、マラソンも人生も同じことが言えるのかなと思いますね」。
自粛生活中、マナーを守ってのランニングや、おうち時間でのその場足踏みなどできる運動を勧めている千葉さん。コロナが終息した後の日常を見据えて、こう話してくれた。
「子どもたちは特に、今まで当たり前だと思っていた日常は当たり前じゃないと知る機会になったと思う。難しいですよね、お店がなくなったり、生活の危機に直面している方もいらっしゃるから。でも、小出監督の『せっかくだから』という言葉を使わせていただいて、今はできることを積み重ねて、自粛が解けた時に動き出せる準備をしておく期間だと思います」
全国高校総体や、高校野球の夏の甲子園大会が中止となるなど、選手たちにはつらい1年となっている。それでも、スポーツで目指す夢や目標を見つけて、あきらめないでほしいと願う。スポーツの力を知っているからだ。
「私は高校駅伝で全国に行ったけれど、インターハイには出たことがありません。五輪選手は特別と思っている人が多いですが、最初は大したことなく、試行錯誤をして自分らしい頑張り方を見つけて、それが積み重なって世界へつながったと思います。考えること、工夫すること。今の生活の中でも同じことが言えると思いますし、未来でもより自分らしい人生を送るのに大切かなと思います。
『夢や目標はトップアスリートだけが持つんでしょ』と難しく考えてしまう人もいると思いますが、私は“ワクワク道しるべ”と言っているんですけれど、今はせっかく時間もあるので時間と向き合ってワクワクを探す時間にするのもとてもいいんじゃないかと思います」
簡単に切り替えるのは難しい問題。でも、せっかくだから――。コロナ終息後のワクワクする時間を想像して、今を精一杯過ごしてほしい。日常が戻れば、スポーツの力がまた活気をもたらしてくれるはずだから。
■千葉 真子(ちば・まさこ)
1976年7月18日生まれ、京都府出身。立命館宇治高で陸上を始め、95年に旭化成入り。96年アトランタ五輪女子1万メートルで5位入賞、97年世界選手権(アテネ)では日本女子トラック長距離種目初となる銅メダルを獲得。98年にマラソンに転向。01年に佐倉アスリート倶楽部(SAC)の一員となり、02年から豊田自動織機に所属。03年世界選手権(パリ)で銅メダルを獲得した。北海道マラソン優勝3回。マラソンの自己ベストは2時間21分45秒。06年に引退後はゲストランナーとして全国のマラソン大会に出演する他、「千葉真子 BEST SMILE ランニングクラブ」を立ち上げ、市民ランナーの指導や普及活動も積極的に行っている。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)